線維芽細胞から分泌されるペリオスチンに注目
大阪大学は12月8日、急性心筋梗塞によって心臓から分泌されるたんぱく質「ペリオスチン」が、心不全を発症させることを解明した研究結果を発表した。
画像はリリースより
この研究は、同大学大学院医学系研究科臨床遺伝子治療学寄附講座の谷山義明准教授、眞田文博特任助教らの研究グループによるもの。研究成果は「Hypertension」電子版に、米国東部時間の12月7日付けで掲載された。
急性心筋梗塞になると心臓にメカニカルストレスが起こり線維芽細胞からペリオスチンが分泌され心不全が誘導されるが、そのメカニズムは不明だった。一方で、ペリオスチン遺伝子には、4つのスプライス・バリアントが存在している。
患者のQOL改善に寄与、高額な医療費抑制にも
研究グループでは、ペリオスチン1が単独で心不全を誘導することを報告している。一方で、ハーバード大学などの研究から、すべてのバリアントの抑制は急性心筋梗塞後の心不全を抑制するが、ペリオスチン2やペリオスチン4には心筋再生・血管新生や心破裂抑制などの心保護作用があることが報告されている。また、すべてのペリオスチン・バリアントを抑制すると心不全が抑制されるが、急性期の心破裂による死亡も上昇するとしている。
そこで、研究グループでは、心保護作用のあるペリオスチン2、4を抑制せず、心不全誘導作用のあるペリオスチン1のみを抑制する治療法を検討した。その結果、ペリオスチン1特異的中和抗体を独自に作成し、急性心筋梗塞発症後に投与することによって、心破裂を伴わずに慢性期の心不全発症を抑制することに成功した。
急性心筋梗塞後の心不全発症は世界的に重要な問題となっている。今回の研究成果により、慢性期の心不全発症が抑制できれば、患者の生活の質や予後を改善するだけでなく、心不全医療にかかる高額な医療費を抑制することにもつながるとしている。
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