光断層撮影技術、早期がん診断への応用検討も
京都大学は12月15日、量子もつれ光を用いた2光子干渉により、分解能0.54μmに相当する2光子量子干渉縞を実現、また、群速度分散耐性を実証したことを発表した。研究は、同大学大学院工学研究科の竹内繁樹教授、岡野真之特定研究員ら、物質・材料研究機構の栗村直主幹研究員ら、名古屋大学の西澤典彦教授で構成する研究グループによるもの。
画像はリリースより
光干渉断層撮影技術(光コヒーレンストモグラフィ)は、眼科分野において、網膜などさまざまな組織の診断技術として急速に普及している。さらに、肺や消化管の表層組織の断層撮影への応用も進められており、早期がんの診断などへの検討も進められている。従って、より高い深さ分解能の実現は非常に重要となる。例えば、網膜の厚みのより精密な測定が可能になれば、緑内障の進行を発症前から予測することも期待される。
光干渉断層撮影技術の深さ分解能を向上させるには、より広帯域の光源を用いる必要があるが、光源の帯域を拡げると、光の波長ごとに光の進行速度が異なる群速度分散により、分解能が逆に劣化するというジレンマがあり、分解能は5μmから10μm程度に制限されていた。それを解決する方法として、量子もつれ光の量子干渉を利用する量子光干渉断層技術が、2002年に提案された。この方法では、原理的に群速度分散による分解能の劣化がなく、高い分解能を得られることが期待される。
世界記録となる0.54μmの分解能に相当
今回、研究チームは非常に広い帯域を持つ量子もつれ光源を開発し、世界記録となる0.54μmの分解能に相当する量子干渉縞を実現した。これは、従来の光断層撮影の原理検証で記録されていた世界記録0.75μmを超える値。さらに、この超高分解能が、分散媒質(水)などによってほぼ影響を受けないことも実証したという。
研究成果により、これまで5μmから10μmに制限されていた、光断層撮影の深さ分解能を大幅に向上させ、1μmを切る分解能をもつ量子光断層撮影装置の開発が期待される。それにより、網膜の厚みの高精度モニタリングによる緑内障の発症前診断の実現などの可能性もあるという。
研究グループは今後、量子もつれ光源の大光量化の研究を進め、量子光断層撮影装置の実現を目指すとしている。
▼関連リンク
・京都大学 研究成果