■慶大の全国調査で判明
薬局等で血糖自己測定を行う「検体測定室」の利用者の多くは測定結果を踏まえた生活習慣等に関する健康アドバイスを薬剤師に求めていることが、慶應義塾大学薬学部医療薬学・社会連携センターの山浦克典教授らの全国調査で明らかになった。利用者からアドバイスを求められた経験のある薬局は8割を超えたが、一方でほとんどの薬剤師はガイドライン上の規制により、一般論でしか回答できないことにやりづらさを感じていることも判明。これが検体測定室を継続する阻害要因の一つになっていることが考えられた。
昨年3月に臨床検査技師等法が改正され、「検体測定室」を厚生労働省に届け出ることにより、薬局における血糖自己測定が可能となった。ただ、法改正から1年半が経過したものの、今年11月末時点で届け出数は1132カ所と全薬局の2%未満にとどまり、頭打ち状態となっているのが現状。そこで山浦氏らは、検体測定室の現状を把握し、普及と継続を妨げている要因を明らかにすることを目的に全国調査を行った。
今年9月に全国で検体測定室の届け出薬局924件を対象に、郵送による質問紙調査を実施した。その結果、検体測定室を設置した理由は、「セルフメディケーションの推進に貢献するため」が約8割と最も多く、次いで「薬局の機能拡大のため」で、「検体測定による利益を期待」はほとんどなかった。検体測定室の負担要因について実施する前後で比較すると、「負担なし」と回答した薬局が実施後に有意に増加。「作業書などの書類の作成・保管」「スペース」「機器設置の経費」「感染防止対策」の項目は実施後に有意に低下した。
最も負担要因に挙げられていた「人員」については、実施前後でほとんど変わらず、検体測定室の実施に当たって人員の確保が課題になっていることがうかがえた。「その他」の負担要因について、「医師会との関係」などが挙げられた。
検体測定のメリットについては、「利用者とのコミュニケーションのきっかけ」「かかりつけ薬局・健康相談ステーションとしての活用が増えた」との回答が多く、9割以上の薬局が検体測定を実施してよかったと考えていた。
ただ、測定結果に対し、利用者から生活習慣の相談や健康食品、サプリメント、OTC薬の相談を求められた薬局が8割を超えたが、薬剤師が食事や運動等の生活上の注意などを実施することは違法行為。これに対し、ほとんどの薬剤師は利用者から健康アドバイスを求められた場合、一般論でしか回答してはいけないことや生活指導してはいけないことなど、ガイドラインに改善すべき点があると考えていることが分かった。
これらから、利用者は検体測定の結果を踏まえたアドバイスを薬剤師に求めているにもかかわらず、これらをガイドライン上の規制で実施できないことにほとんどの薬剤師がやりづらさを認識しており、ガイドラインが検体測定室を継続する阻害要因の一つになっていることが考えられた。山浦氏らは「ガイドライン上の規制と国民のニーズの擦り合わせが必要」としている。