全ゲノムシーケンスの結果、解析手法によって大きく異なることも
理化学研究所(理研)は12月9日、がんの全ゲノムシーケンス解析における、世界の代表的ながんゲノム解析機関の解析手法の比較およびベンチマーク評価を行うことにより、解析の問題点を明らかにし、新たなガイドラインを作成したと発表した。同研究は、理研統合生命医科学研究センターゲノムシーケンス解析研究チームの中川英刀チームリーダー、藤本明洋副チームリーダーらが参画する国際共同研究グループにより、国際がんゲノムコンソーシアム(ICGC)のプロジェクトの一環として行われた。
画像はリリースより
現在、ICGCや世界の様々ながん研究機関、専門病院では、次世代シーケンサー(NGS)と情報解析技術を駆使して、全ゲノムシーケンス解析が多くのがん患者に対して行われている。今後、全ゲノムシーケンスが、研究の分野のみならず「ゲノムの病気」ともいえるがんの診断や個別化医療の分野においても、標準的な解析手法になるものと予測されているが、DNAシーケンスやその情報解析の手法によって、解析結果(変異の有無)が大きく異なる場合があり、解析方法の標準化が求められている。
がん診断や治療選択での活用のためにも標準化望まれる
今回、がんの全ゲノムシーケンス解析での情報解析の問題点を明らかにするために、2つのベンチマークであるNGSからの生データまたは実際の腫瘍のDNAに対して、理研を含む18カ所の代表的な世界のがんゲノム解析機関で全ゲノムシーケンス解析を行い、それらの変異同定の結果を比較。
その結果、変異同定の解析アルゴリズムによって大きな違いが生じていることがわかったとしている。変異の種類やゲノムの部位、解析アルゴリズムの特徴に応じて、結果の差異が認められ、さらにNGSの前処理の方法によっても大きく結果が異なっていることが明らかとなった。
同研究グループでは、これらの解析のばらつきを解決するため、がんの全ゲノムシーケンス解析のためのガイドラインおよびベンチマークとなるデータセットを作成し、公開した。さらに詳細に結果の精度を検証した上で、シーケンス解析のばらつきを解決するためにがんの全ゲノムシーケンス解析用のガイドラインを作成したという。
今回の研究成果により、今後、がんの診断や治療選択に一般的に使われる可能性のある、がんの全ゲノムシーケンス解析の標準化が促進されることが期待される。なお、研究成果は、国際科学雑誌「Nature Communications」に12月9日付けで掲載された。
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