短期、長期の運動記憶が脳内で保存される様子の画像化に成功
東京大学は12月9日、同大学大学院人文社会系科の今水寛教授(ATR認知機構研究所客員所長)が、北海道大学の小川健二准教授、南カリフォルニア大学のニコラ・シュバイゴファー准教授、スムシン・キム研究員らとともに、短期と長期の運動記憶が脳の異なる場所に保存される様子を、世界で初めて画像として捉えることに成功したと発表した。
画像はリリースより
試験前の一夜漬けのように、早く覚えたことはすぐ忘れてしまうが、自転車の乗り方のように時間をかけて練習したことはずっと覚えている。このように、一夜漬けのような短期の運動記憶と自転車の乗り方のような長期の運動記憶が脳内に存在することは、これまで理論的に示されていた。しかし、脳が短期と長期の運動記憶を保存する様子を可視化して、これまでの理論を支持するような実証的な成果は得られていなかった。
fMRI法と計算論モデルの組み合わせで可視化が可能に
研究グループは、短期と長期の運動記憶が脳内で保存される様子を画像で捉えることに成功。明らかになった範囲では、極めて短期な運動記憶は、前頭-頭頂の広いネットワークが、中期的な運動記憶は頭頂の限られた部分、長期の運動記憶は小脳が関連することがわかった。これは、機能的磁気共鳴画像(functional magnetic resonance imaging: fMRI)法という脳の活動を計測できる方法と計算論モデルを組み合わせることで可能になったという。
人間の行動を外から観察しているだけでは、短期的に記憶しているのか、長期的に記憶しているかは不明だが、今回、研究グループが開発した脳の計測と計算論モデルを組み合わせた方法により、脳の内部状態を推定して、どのくらい長期に残る記憶なのかを予測することが可能となる。研究成果は今後、脳の状態をモニターしながら、練習効果が長く残る効率的なトレーニングやリハビリを行うことへの応用が期待できる。
なお、研究成果はオンライン国際科学誌「PLOS Biology」に12月9日付けで掲載された。
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・東京大学 リサーチリリース