魚介類、n-3PUFA摂取と膵がん罹患との関連を調査
国立がん研究センターは12月7日、多目的コホート研究から、魚介類およびn-3多価不飽和脂肪酸(PUFA)と膵がんとの関連を検討した研究結果を発表した。魚介類に多く含まれるn-3PUFA(エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサペンタエン酸(DPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)の総量、以下「魚介類由来n-3PUFA」)、DHA摂取には膵がん罹患リスクの低下と関連が見られ、膵がん予防に寄与する可能性が示唆されたとしている。
画像はリリースより
膵がんは早期発見が非常に困難ながんの1つであり、その予防方法の探索が求められている。現在のところ、たばこ、肥満、糖尿病、慢性膵炎などとの関連が報告されており、これまで多くの疫学研究において膵がん予防に寄与する食事要因が検討されてきたが、明確なことは分かっていなかった。そこで、国がんでは、欧米に比べ魚の摂取量が多い日本人集団において、魚介類、n-3PUFA摂取と膵がん罹患との関連を調査した。
魚介類由来n-3PUFA摂取で慢性炎症の影響軽減の可能性
研究では、1995年と1998年に食事摂取頻度などに関するアンケート調査に回答した45~74才の男女約8万2000人を対象に、がん罹患状況を2010年末まで追跡した調査結果に基づき、検討を行った。
対象者をアンケート調査結果から算出した魚介類、n-3PUFA摂取量で4つのグループに分け、最も摂取量が少ないグループに比べ、その他のグループで膵がんのリスクが何倍になるのかを調べた。α-リノレン酸(ALA)はn-3PUFAの成分の一つだが主に野菜などの種に多く含まれるため、魚介類由来n-3PUFAを用いた検討も行った。
追跡期間中に449例の膵がん罹患を認めた。研究結果によると、魚介類由来n-3PUFA、EPA、DPA、DHAについて、それぞれ最小グループに比べ、最大グループで約20%膵がん罹患リスクの低下が認められたが、統計学的に有意ではなかった。
次に、追跡開始3年以内に膵がんと診断された人を除外して解析したところ、魚介類由来n-3PUFA、DHAそれぞれ摂取量最小グループに比べて最大グループで約30%、統計学的有意に膵がん罹患リスクの低下が認められたとしている。
また、膵がん発生には慢性の炎症が関与していること、魚介類由来n-3PUFAは抗炎症、免疫調節作用を有することも報告された。国がんでは、メカニズムの点から考えると、魚介類由来n-3PUFAを多く摂取することにより、膵がん発生に関与する慢性炎症の影響が軽減しているのかもしれないとしている。
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・国立がん研究センター リサーチリリース