■相次ぐ不正、厚労省も注視
SMOのエシックが受託して実施した治験で、同社のCRCが患者日誌を改ざんしていたことが分かった。本来は被験者が書くべき患者日誌の数値、時刻を7カ所書き換え、空欄のチェックボックスにチェックを入れる不正を行った。8月にモニターから検査時刻の範囲のずれを指摘され発覚。患者日誌の修正が必要とモニターから求められ、CRCが被験者や責任医師に頼まず自分で内容を書き換えた。北里研究所に続きデータ改ざんが相次いだ事態に、厚生労働省は「由々しきこと。業界として襟を正してもらいたい」としている。
同社が受託し、現在も実施中の治験で事件が発覚した。具体的な薬剤名は明らかにされていないが、今年8月に施設の担当モニターが患者日誌を確認し、検査時刻の範囲がずれていることを発見した。
関与した医療機関は1施設、CRCは2人。被験者が記載すべき日誌について、被験者が鉛筆で下書きした部分をCRCが自分で上書きした。このCRCが長期休暇に入ったので、後任のCRCは、前任者が上書きした日誌と同じ内容とするため、新しい日誌に書き換えるよう被験者に頼んだ。その後、前任者が上書きした日誌と内容が同じことを確認後、古い日誌を破棄した。
さらに、後任のCRCは日誌の空欄となっていたチェックボックスにチェックを入れたり、カルテシールや日誌に記載されている数値や日時を7カ所書き換えた。本来、記載すべき責任医師や被験者ではなく、CRCが自ら書き換えた。
同社は「間違っていた数字を正しく直したり、医師が書いた読みにくい数字を書き換えており、いずれも本来あるべき内容に修正されている」と釈明している。今回、モニターが検査時刻の範囲のずれを指摘して事件が発覚したが、モニターからCRCに対し、修正が必要との要求があったとされる。同社も、「CRCが(患者日誌を)修正すべき状況にあったとは思っていない」との認識である。事実であれば、治験依頼者側としてモニターの責任も厳しく問われそうだ。
同社は、山内士具社長名で「関係者に心配をかけ、お詫びする。不適切行為の発生を重く受け止め、二度とこのようなことがないよう再発防止に注力していく」と謝罪のコメントを出した。今後、再発防止策として、第三者調査委員会を設置すると共に、CRCの業務体制の見直し、CRCと管理者の教育や臨床試験への取り組み姿勢、倫理教育の徹底を打ち出しているが、調査委で原因究明は行わないとしている。
厚労省は、同社と治験依頼者側に詳しい調査を指示しており、依頼者側の製薬企業等も含めて、データに不適切な取り扱いがあったかどうか、最終的に資料の信頼性が確保されているか、調査の結果を見て対応を検討したいとしている。
医薬・生活衛生局審査管理課の山田雅信課長は、「GCPに則り、行った業務をきちんと記録に残し、後から検証できるようにしなければならない。それが規定通りに行われていないのは由々しきこと。今後SMO協会として、どのように対応していくのか聞いていきたい」との対応方針を示している。
約2年前には、大手SMOのサイトサポート・インスティテュートが被験者の身長データを改ざんした不正が判明。これを受け、SMO協会は6月、信頼性確保のための自主ガイドラインを策定し、再発防止に向け対応を行ったばかり。その矢先の不正について、山田課長は「別の社からも不正が出てきたのは残念。業界として襟を正してもらいたい」と注文。改めて傘下の会員企業への指導徹底を求めた。