投与12週間後のウイルス学的著効率95%達成
2013年の日本のC型肝炎ウイルス(HCV)患者数が150万人と推計(国立感染研究所)されているなか、昨年よりインターフェロンフリーの経口C型肝炎治療薬の発売が相次いでいる。日本人に多いC型慢性肝炎ジェノタイプ1型治療薬として、アッヴィ合同会社が2015年9月28日に製造販売承認を取得したのは「ヴィキラックス(R)」だ。
埼玉医科大学消化器内科・肝臓内科教授の持田智先生
その発売に先立って、同社は12月1日にプレスセミナーを開催。埼玉医科大学消化器内科・肝臓内科教授の持田智先生がインターフェロンフリー時代における最新の治療法について講演した。
ヴィキラックスは、2種の直接作用型抗ウイルス剤であるパリタプレビル(PTV)/リトナビルとオムビタスビル(OBV)の配合錠。12週間にわたって固定用量を1日1回服用する。第3相臨床試験であるGIFT-1試験の主要評価項目である投与12週間後のウイルス学的著効率(SVR12)は95%を達成した。
持田先生は、「特に日本人に多いジェノタイプ1b型に強力に効く」と強調。投与する際の問題点として、PTVの血中の消失半減期が速いことを挙げ、「これを補うために、ブースターという血中濃度を上げるリトナビルが配合剤の中に入っている。PTVは肝臓の肝細胞の中のCYP3A4という薬物代謝酵素で代謝されるが、それと同じ酵素で代謝されるリトナビルを入れておくと、競合し、PTVの血中濃度があまり下がらない」と説明した。よって、PTVの1日1回の投与が可能になったとしている。
中等度以上の肝障害患者で血中濃度上がる場合も
ヴィキラックスの利点として、尿中でなく、糞便中に排出されるため、腎臓が悪い人でも安心して服用できることが挙げられた。実際、腎機能障害が軽度、中等度、重度のいずれでもOBVの血中濃度はほとんど変わらず、PTVは重症の場合に20%程度濃度が上がるが、「体に害はない」(持田先生)。また、リトナビルはいずれでも血中濃度が上昇するが、「併用薬を工夫すれば済む」(持田先生)という。
一方で、肝機能障害がある人には「注意が必要」(持田先生)。中等度以上の肝障害だと血中濃度が上がり、特に腹水や肝性脳症がある人は非常に高くなるため、持田先生は「肝障害が進んでいる人には不向きな薬」と話している。
HCV患者にはこれまで、注射薬のインターフェロンを用いた治療が中心だったが、経口薬の開発により、インターフェロンでの治療が受けられなかった、効果が見られなかった患者に新たな治療の選択肢がますます増えることが期待される。
▼関連リンク
・アッヴィ合同会社 プレスリリース
・アッヴィ合同会社 ヴィキラックス