ワクチン中の変異持った菌の存在明らかに
岡山大学は12月7日、結核に対するBCGワクチン計7ロットのゲノム解析を実施し、培養による新たな変異の混在が少なく、安定性が良いことを確認したと発表した。この研究は、同大学大学院医歯薬学総合研究科(歯)口腔微生物学分野の大原直也教授、長崎大学熱帯医学研究所国際保健学分野の和田崇之助教、京都大学、神戸市環境保健研究所、結核研究所、日本ビーシージー製造株式会社の共同研究グループによるもの。
画像はリリースより
BCGワクチンは、1921年にフランス・パスツール研究所のCalmette博士とGuérin博士が、ウシ型結核菌の培養を繰り返すことにより弱毒化して作製。日本には1924年に志賀潔博士によって持ち込まれ、1961年に最初のシードロット(実際に接種する市販ロットの種となるもの)が作製された。現在は2代目のシードロットが使用されている。
BCGワクチンは人類に対して最も数多く接種されているワクチンだが、長年の継代培養の繰り返しによる作製で、変異を生じた菌が含まれるという懸念が持たれている。実際、各国のBCGワクチンには異なる部分(変異)があること、日本のBCGワクチンには少なくとも2種類のタイプが存在することが知られている。
同研究グループは、BCGワクチンの安全性を担保するためには、日本のBCGワクチンの中に変異を持った菌がどれだけ存在するかを明らかにする必要があると考え、全遺伝情報の解析を実施したという。
7種類の点変異検出も、新規の変異ではなく
同研究グループでは、BCGワクチンの新旧シードロット2種類、継代培養・製造された市販ロット3種類、日本のシードロットに由来する海外の市販ロット2種類の計7ロットのそれぞれに含まれる全遺伝情報を解析した。大きな変異として7種類の点変異が検出されたが、これらは新規の変異ではないことが明らかになったとしている。
今回の解析により、日本のシードロットとそれに由来する国内外の市販ロットがいずれも新規変異の混在が少なく、安定性が良いことが確認された。この研究成果は、日本のBCGワクチンの安全性の担保につながるものであると、同研究グループは述べている。
同研究成果は英国のオンライン科学雑誌「Scientific Reports」に12月4日付けで掲載されている。
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