約118万人対象に抗不安・睡眠薬処方の実態を2年間追跡
医療経済研究機構は12月2日、奥村泰之主任研究員らの研究グループが行った多施設からの抗不安・睡眠薬処方に関する研究結果を発表した。
画像はリリースより
同調査は、健康保険組合に加入する約118万人を2年間追跡し、抗不安薬や睡眠薬の大部分を占めるベンゾジアゼピン受容体作動薬(BzRAs)と呼ばれる薬剤群について、同じ患者に対して、複数の医療機関から処方されている実態を調査したもの。
その結果、757人に連続31日以上にわたる重複処方が認められ、複数の身体疾患を併存する人ほど重複処方の可能性が高いことが明らかになった。また、1年後でもその半数以上の人に重複処方が認められることがわかったとしている。
これらは、多施設において複数の身体疾患の加療が必要となる中で、意図なしに重複処方が生じてしまっていることを示唆する。重複処方の改善のためには、特に、複数の身体疾患を併存する患者に対して、薬剤師による関与を強化するなどの対策が求められると考えられる。
BzRAsの使用量多く、多施設処方の状況検討が課題
これまで欧米における研究では、主に鎮痛薬の多施設処方が注目され、多施設処方が不正販売の原因や過量服薬による入院・死亡の危険因子であると報告されている。日本においては、BzRAsの人口当たりの使用量が多く、多施設処方の状況を検討する必要があると考えられていた。
また、厚生労働省は、2010年に「過量服薬への取組」という指針の中で、レセプト等を利用して、多施設処方を防止する必要があると提起しているが、多施設処方の定義が複数存在しているため、具体的にどのような場合に防止すればよいのか不明瞭な状況となっていることも問題だった。
なお、同研究成果は、米国の学術誌「Drug and Alcohol Dependence」オンライン版に11月22日付けで掲載された。
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・医療経済研究機構 プレスリリース