糖尿病治療、心血管イベント発症の回避が課題
順天堂大学は12月2日、2型糖尿病患者の動脈硬化が、経口糖尿病治療薬で抑制されることを発見したと発表した。これは、同大学大学院医学研究科・代謝内分泌内科学の三田智也准教授、綿田裕孝教授らの研究グループによるもの。大阪大学などとの共同研究で行われ、研究成果は同日にアメリカ糖尿病学会雑誌「Diabetes Care」オンライン版にて公開された。
画像はリリースより
糖尿病治療では、心筋梗塞や脳梗塞などの心血管系の病気である心血管イベントの発症を回避することは重要な課題となる。
研究の背景として、経口糖尿病治療薬である「DPP-4阻害薬」は、インクレチン濃度を上昇させることで、膵β細胞からインスリン分泌を促進させる、あるいは、膵α細胞からのグルカゴン分泌を抑制し、血糖値を低下させる新しいタイプの薬剤(インクレチン関連薬)で、日本では2009年に上市された。一方で、インクレチンホルモンは、血管を動脈硬化から保護する作用があることが、これまでの動物や細胞の実験で報告されている。しかし、実際の2型糖尿病患者においては、DPP-4阻害薬が血糖値の低下だけでなく、動脈硬化の進展についてどのような効果をもたらすのかわかっていなかったという。
心筋梗塞や脳梗塞の発症予防の可能性も
同研究グループは、2型糖尿病患者を対象に、DPP-4阻害薬(アログリプチン安息香酸塩)を用いた治療法が動脈硬化に及ぼす影響を評価。比較試験では、DPP-4阻害薬を投与しない通常治療群を対照とし、動脈硬化の指標として、頸動脈の超音波検査により簡単に測定できる頸動脈内膜中膜複合体肥厚度(IMT)を用いたとしている。
この試験は、日本全国の糖尿病専門医が診療する11施設で行われ、341名の心血管イベントの既往のない2型糖尿病患者が参加。そのうち、DPP-4阻害薬のアログリプチン投与群172名および通常治療群169名に割り付けた。2年間の治療後、通常治療群と比較した結果、アログリプチン投与群では、頚動脈のIMTの進展を有意に抑制していることを発見。つまり、DPP-4阻害薬を投与すると動脈硬化が抑制されることが判明したという。
同研究グループは、今回の結果から、経口糖尿病治療薬であるDPP-4阻害薬を投与し、動脈硬化の進展を抑制することで、将来の心血管イベントの発症を予防できると考えられるとしている。
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・順天堂大学 プレスリリース