■治験企業の判断材料に
臨床研究・治験の実施体制とデータの世界標準化を目指す米非営利団体「ACRES(エイカーズ)」は、医療機関における治験責任医師、CRC、データマネジャー等の臨床試験専門職の教育研修履歴をクラウド上で共有する仕組みを完成させた。インフラ標準化に向けた第一段階として、基本要素の一部を構築。責任医師等の教育研修履歴を共有することにより、臨床試験に関わる人材の「見える化」を実現した格好だ。第一線で活躍する専門医やIRBの運営状況などを把握でき、製薬企業が治験を依頼する判断材料に生かせる。
ACRESは、全世界で臨床研究・治験の共通インフラ作りに向けた活動を展開。2017年をメドに、標準的なデータベースの完成を目指している。第一段階として、ACRESの参加パートナー、米ヘルスケアポイント社が運営する臨床試験専門職のデータベース「ブルークラウド」を活用し、教育研修履歴の共有化を実現。インフラの基本要素の一部を構築した。
医療機関の治験責任医師、CRCなどの教育研修履歴を全てクラウド上で管理するというもので、院内の第三者が保証、公開することにより、製薬企業が治験を依頼するに当たって医療機関の治験実施能力を判断できるメリットがある。
製薬企業が高血圧、脳卒中治療薬の開発を計画しようと考えた場合、責任医師はGCP研修に加えて高血圧の臨床評価ガイドラインなど、様々なガイドラインを熟知している必要があるが、「ブルークラウド」を使うことで、クラウド上で研修のリアルタイムの最新受講履歴を確認できる。
これにより、医療機関の臨床試験スタッフの陣容を把握でき、さらに複数の病院で活動するSMOとデータを共有することにより、臨床試験スタッフの教育研修履歴やIRBの運営条件など、施設調査に訪問しなくても、その医療機関の臨床試験環境が把握できるようになる。
治験を依頼する製薬企業は、論文数などで最前線の臨床医を選別でき、IRBの運営が効率的かどうか把握することも可能となる。
たとえば、製薬企業が300症例を登録目標とする治験で、症例数が足りずに施設を追加しようとした場合、ACRESのデータベースで調べられるようになる。これにより、製薬企業はコストを抑えられ、SMOは施設広報の手間をかけずに、コーディネートなど医療機関のサポートという本来業務に専念できるメリットが生まれる。
医療機関の臨床試験スタッフの教育研修履歴を共有することの意義は大きく、今後は人材の「見える化」に向けた動きが加速しそうだ。