第三者委員会が報告書を公表、組織的関与を指摘
化学及血清療法研究所(化血研)は12月2日、同所が製造する国内献血由来の血漿分画製剤のすべてが承認書と異なる製造方法で製造されていたことにより、出荷停止となっている問題について、第三者委員会がまとめた調査結果報告書を発表。長期にわたる承認書と実製造との不整合及び隠ぺいが認められた、と報告した。1974年頃からおよそ40年以上にわたり、血漿分画部門の組織的な隠ぺい行為があったことがわかった。
今回の報告は、TMI総合法律事務所顧問弁護士で元東京高等裁判所長官の吉戒修一氏を委員長とする化学及血清療法研究所第三者委員会によるもの。化血研が製造販売する国内献血由来の血漿分画製剤において、同報告書提出日時点で、31個の不整合が存在。アルブミンでは1974年頃より不正製造が行われたほか、その多くは1980年代から1990年代前半にかけて多くの不整合及び隠ぺいが生じたとしている。
また、遅くとも1995年頃までには、化血研の血漿分画部門の一部で虚偽の製造記録の作成を開始。さらに遅くとも1998年頃までには同部門において、重大な不整合が厚生労働省など当局の査察で発覚することを回避するため、承認書に沿って製造しているかのような虚偽の製造記録を組織的に作成するなど、各種の隠ぺい行為に及ぶようになったという。
不整合や一変承認申請の不備を防止するためには、監督機関との緊密なコミュニケーションが必要不可欠であるが、そのようなコミュニケーションを欠いた化血研の閉鎖性、独善性が一連の不正を生じさせた最大の原因であると第三者委員会は推認。血漿分画製造部門出身の前理事長や現理事長、その他の理事の一部は、不整合や隠ぺい行為について認識しながら放置しており、不整合が血漿分画部門という一部門の問題にとどまるようなものではなく、化血研全体の問題であったと指摘した。
常務理事以上の役員、外部出身の人材に刷新へ
今回の報告を受け、化血研は新体制の方針及び責任者の処分を発表。血漿分画製剤の出荷停止に続き、ワクチンについても出荷自粛に至った経営責任は重いとし、常務理事以上(理事長、副理事長、常務理事)の役員については、12月2日付で現職の全員を外し、全て外部出身の人材を充てることを決定した。
理事長の宮本誠二氏は辞任のうえ退職慰労金を全額返上、副理事長の横井公一氏は副理事長を辞職(理事に降格)、常務理事の千北一興氏は辞任のうえ退職慰労金を全額返上、常務理事の城野洋一郎氏は常務理事を辞職(理事に降格)する。また、5人の理事は職員に降格、または退職慰労金の全額返上となった。さらに役員全員が報酬返上を実施。血漿分画製剤を出荷停止した今年6月に遡り、理事長は報酬月額の25%、副理事長・常務理事は15%、理事・監事は 10%相当額を返上する。
今後は、同所経営の閉鎖性、独善性、硬直化を防止するために、理事会メンバーに外部出身の人材も加える。また役員人事案及び役員報酬案の検討・起案について、所外の意見をより広く取り入れることを目的に、役員の選任案及び報酬案に関する所外委員を主にした諮問委員会を、次回の理事改選の2016年6月から設置。あわせて、現在、化血研OBと所外の有識者・専門家それぞれ半数ずつで構成される評議員会の機動力を高め、監視機能を強化するため、評議員の人数を減らすとともに年内を目標に所外の評議員の構成を過半数にするとしている。
同所は、法務・コンプライアンス部門の強化、GMPの改善状況の当局への定期報告、PQS/QMSの改善計画の作成・実行と報告体制の整備など、20項目の再発防止策を発表している。これら改善策について第三者委員会は、大きな前進が見られ、同種事例の再発を防止するために有効な施策とし、確実に実行されることを強く期待するとまとめている。