森氏は、先駆け審査指定制度について、「日本にいろいろなシーズが育っていくために打ち出した施策で、これを成功させることは重要度が高い仕事になる」との認識を示した。米FDAのブレークスルーセラピー制度を引き合いに、「既に米国では指定された品目の承認までこぎ着けている。日本も世界の1~2割の医薬品を生み出せるようにし続けるため、国内や海外で見出されたシーズを引っ張ってこないと、医薬品の世界の中で輝く国であり続けられない」と指摘。そのためにも、打ち出した施策の充実が重要とした。
50品目の指定申請があったことについては、「企業側も世界に先駆けてシーズを育てていこうという気概を持ち、チャレンジ精神があるからこそ提案してきたと思う」と国内メーカーの動きを評価した。
ただ、グローバルで戦っている欧米のメガファーマと真剣勝負ができるかについては、「油断大敵。のんびりしていられない」と危機感を示し、「そういうメガファーマと戦っていくためには、サイエンスや企業戦略の面で、もっとチャレンジし続けなければいけない」との考えを述べた。
その上で、「各社が持っているシーズに磨きをかけると同時に、様々な技術や製品を導入したりしながら、がっぷり組んでいかないといけない。最終的に世界の患者、医療に貢献できる医薬品になるところまで展望しておかなければ、本当の意味で成功にならない」と強調。「やはり世界に視野を広げて、世界に市場を求めることは欠かせない」と述べ、国内メーカーに対し、国際展開する力と発想を持つよう促した。
新薬開発のトレンドが、患者数の少ない疾患の治療薬にシフトしてきているとの認識を示し、「希少疾患の治療薬だが、世界に求めている患者がいて、そこに応えていけることは価値のあることだと思う。ぜひ、世界にしっかり医薬品を展開させる発想で、国内メーカーには頑張ってもらいたい」とエールを送った。
さらに、先駆け審査と安全対策の関係について、「最近は市販直後調査を丹念に行い、分かってきた安全性に関する問題は、極めて早く、まだ確定的なリスクとなる前から公表している」とし、「そこまで安全対策を強化してきた下地があるし、問題発生時に対応してきた実績がある」との認識を示し、「攻めと守りのバランスがしっかりとれ、そのレベルが向上してきているからこそ、イノベーションにチャレンジする先駆け審査指定制度に踏み込んでいける」と強調。日本の医療現場からの副作用報告も迅速で丁寧と高く評価し、「これら日本の良さがあって成り立つ先駆け審査指定制度があるということを、もっと多くの人に分かってもらいたい」と述べた。