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統合失調症の病名変更が新聞報道に与えた影響を調査-東大

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2015年12月02日 PM12:45

約30年間にわたる新聞記事データを解析

東京大学は11月30日、同大学学生相談ネットワーク本部/保健・健康推進本部の小池進介講師らが、統合失調症の病名変更が新聞報道に与えた影響を調査した研究結果を公表した。同講師らは、過去約30年間の新聞記事2200万件を網羅的に調査。病名が「精神分裂病」から「」に変更されたあとは、「精神分裂病」を使用する記事はほとんどなく、統合失調症の偏見・差別の減少に貢献した可能性が示されたという。


画像はリリースより

これまでの国内外の研究から、統合失調症が犯罪関連記事とともに報道されることが多いことは、偏見・差別を助長する原因の1つと指摘されてきた。日本では2002年に、統合失調症は精神分裂病から名称を変更し、統合失調症の偏見・差別を小さくすることを世界に先駆けて示してきた。しかしこれまで、病名変更がマスメディアに与えた影響を網羅的に解析した研究はなく、実態の把握が望まれていたという。

精神疾患についての報道のあり方を提案

小池講師らは、1985年1月1日から2013年12月31日に朝日新聞、産経新聞、毎日新聞、読売新聞で記載された29年間の新聞記事2200万件から、「精神分裂病」「統合失調症」を見出し、もしくは本文に含む記事を、テキストマイニングを用いて抽出し、解析。その結果、2002年の新聞記事では、統合失調症に関する記事の38.9%が、「精神分裂病」「統合失調症」双方の名称を含んでいる一方で、2004年以降は、3件に減少していることを明らかにした。また、病名変更後も統合失調症に関する記事は、その見出しに用いられた単語の24.5%が犯罪関係であり、この傾向は名変更の前後で違いはなかったという。

これまでの犯罪研究により、犯罪事案は、統合失調症など精神疾患の有無よりも、貧困などの社会経済的状況、両親の離婚や虐待などの社会環境、アルコールや違法薬物の問題と関係していることが分かっている。今回の調査結果を受けて小池講師は、「マスメディア報道では、犯罪記事で精神疾患との関係を安易に結びつけず、他の要因も踏まえたうえで、多元的に議論する必要がある」と述べている。

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