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心臓組織シート、細胞が生きた状態で多数積層化する新手法開発−京大

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2015年12月01日 PM02:30

マウスES細胞から長期生存する心臓組織様の構造作製に成功

京都大学は11月27日、同大学医学研究科の松尾武彦客員研究員、iPS細胞研究所/再生医科学研究所の山下潤教授らの研究グループが、ゼラチンハイドロゲル粒子を利用することで、マウスES細胞から作製した心臓組織シートを簡便に積層化する手法を確立し、このシート15枚を積層化して、細胞が生きた状態で厚さ約1mmにすることに成功したと発表した。


画像はリリースより

現在、拡張型心筋症や虚血性心筋症などの、重度の心不全の患者に対しては、心臓移植が最も有効かつ最終的な治療法とされているが、ドナー不足は極めて深刻で、心臓移植以外の有効な治療法を確立することが求められている。

重症心不全の患者の心臓では、心筋細胞が失われるだけでなく、心臓を構成している多様な細胞が失われることで、組織構造が壊れ、結果として機能低下を起こすことから、細胞の移植効果を高めるには、心筋細胞だけでなくその他の心臓を構成する細胞も十分に補い、心臓組織構造として再構築することが望ましいと考えられている。この点で、iPS細胞は、大量に増殖させたうえで多様な心臓を構成する細胞群を効率的に分化誘導し、十分量供給できる可能性がある。

重症心不全の治療法開発につながる成果

同研究グループは、2012年に報告した、心筋細胞、血管内皮細胞、血管壁細胞を含む心臓組織シートの作製方法(Masumoto, Stem Cells, 2012)を用いて、マウスES細胞から心臓組織シートを作製。ゼラチンハイドロゲル粒子を利用することで、細胞シートを簡便に多数積層化する手法を確立した。

マウスES細胞から作製した心筋・血管などを含む心臓組織シートを、ゼラチンハイドロゲル粒子を挿み込みながら15枚積層化し、厚さ約1mmにすることに成功。また、ラット心筋梗塞モデルに、積層化したシート5枚を移植すると、移植後3カ月という長期にわたって、血管形成を伴った厚い心臓組織の構造として生着していたという。

同研究成果は、長期に渡り機械的に心臓収縮をサポートし、重症の心不全を治療できる方法開発につながる成果となる。この方法は、他の臓器・組織にも幅広く応用可能で、再生医療への大きな貢献となることが期待される。

なお、同研究成果は、英国科学誌「Scientific Reports」に11月20日(英国時間)付けで掲載された。

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