新規化合物「MA-5」でモデルマウスの寿命を延長
東北大学は11月26日、難治疾患であるミトコンドリア病の進行を抑える効果がある新規化合物MA-5を開発したと発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科病態液性制御学分野および医工学研究科分子病態医工学分野の阿部高明教授らが、岡山理科大の林謙一郎教授、自治医科大の小坂仁教授、筑波大の中田和人教授らの研究グループによるもの。研究成果は、米国腎臓学会学術誌 「Journal of the American Society of Nephrology」電子版に11月15日付で掲載されている。
画像はリリースより
ミトコンドリア病は、細胞内のエネルギー産生工場ともいえるミトコンドリアに障害をきたす遺伝性の希少疾患。神経・筋、循環器、代謝系、腎泌尿器系、血液系、視覚系、内分泌系、消化器系でエネルギー(ATP)産生低下がおこり、幼少期から非常に重篤な障害をきたす。国内では700人ほどが報告されているが、現在のところ厳密に効果があると確定された治療薬はない。
ALSやパーキンソン病などの疾患に対する治療薬開発につながる期待も
研究グループは、尿毒症患者の血中の腎不全物質を解析する過程で、ある種の内因性インドール化合物群にATP産生亢進作用があることを見いだした。さらに、その化合物の誘導体ライブラリーをスクリーニングし、新規化合物「MA-5」を発見。MA-5はミトコンドリア病患者由来の培養細胞の細胞死を抑制し、ミトコンドリア病態マウスモデルの心臓・腎臓の呼吸を改善、生存率を上昇させたという。
また、既存のミトコンドリア病治療薬の作用機序が抗酸化効果であるのに対して、MA-5はミトコンドリア内に存在するミトフィリンという膜タンパク質に結合してATPを増やすという全く新しいメカニズムあることも明らかにしたとしている。
今回の研究成果により、MA-5は現在治療法のないミトコンドリア病の新しい治療薬となる可能性が示唆された。ミトコンドリア機能異常は筋萎縮性側索硬化症(ALS)、パーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン病などの神経変性疾患や糖尿病、老化現象などの疾患に係わっており、MA-5はこれらの疾患に対しても治療薬となる可能性があると研究グループは述べている。
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