MLLキメラタンパク質、SL1利用し白血病引き起こす
京都大学は11月24日、同大学医学研究科の奥田博史特定助教、横山明彦特定准教授らの研究グループが、MLLキメラタンパク質がSL1と呼ばれるタンパク質複合体を利用して白血病発症へと導いていることを発見したと発表した。
画像はリリースより
染色体転座という遺伝子異常によってMLL遺伝子が異なる遺伝子と融合すると、MLLキメラと呼ばれる異常タンパク質が生じ、このタンパク質が働くと難治性の白血病を引き起こす。しかし、これまでに、MLLキメラタンパク質が遺伝子の発現を活性化するメカニズムはよく分かっていなかった。
今回、同研究グループは、始めはじめにMLLキメラタンパク質のどの部分が細胞を白血病化する機能をもっているのか明らかにするために、マウスの造血前駆細胞内に様々なMLLキメラの変異体を導入し、その活性を調査。その結果、MLLキメラと結合するAF4と呼ばれるタンパク質の構造の一部分が白血病の発症に必須の役割を果たしていることを発見した。
次に、独自に開発したタンパク質精製技術を用いて、このAF4中の白血病発症に重要な役割を果たしている部位に結合するタンパク質を探索した。その結果、SL1と呼ばれるタンパク質複合体がAF4と結合することを発見した。これらの解析から、MLLキメラはSL1を利用してさまざまな遺伝子の発現を活性化し、細胞を白血病化させることが明らかとなったという。
新たな白血病治療薬創薬開発へとつながる可能性も
白血病は、乳児から成人まで幅広く発症する血液のがんであり、異常MLL遺伝子が原因の白血病は乳児や子供に特に多く発症する。白血病の治療は近年の抗がん剤治療の発展で治療できるケースが非常に多くなってきたが、MLLキメラ遺伝子が原因の白血病は治療が難しく、強い抗がん剤を用いた治療や骨髄移植を行っても多くの場合再発してしまうという。
今回の研究成果により、MLLキメラによる白血病化のメカニズムを基盤にして、将来新たな白血病治療薬が開発されることが期待される。今後、同研究グループは、さらに異常MLL遺伝子による白血病化のメカニズムを詳細に解析し「白血病のアキレス腱」と言えるような創薬標的を見出していきたいとしている。
なお、同研究成果は、英科学誌「Nature Communications」電子版に11月23日付で公開されている。
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・京都大学 研究成果