■“電子手帳”持たない患者に対応
香川県薬剤師会は、高齢者など電子お薬手帳を利用していない患者の調剤情報を電子化して一元管理し、県内の会員薬局間で共有するシステムを構築する。同意を得た患者にカードを発行。そこに記載された個別の番号を使って、クラウド上のデータセンターを介して薬局薬剤師が調剤情報を登録、閲覧する。「日薬eお薬手帳」の機能を基盤に、香川県の補助金を得て今年度からシステム開発に着手した。来年1月以降に試行を開始し、3月末までに本格的な運用に踏み切る計画。会員薬局の半数がこの事業に参加する見通しだ。
事業に参加する会員薬局の薬剤師は、店頭で患者に利用規約を説明。同意して利用申請書を提出した患者の情報をシステムに入力し、名刺大のプラスチックカードを発行して患者に手渡す。院外処方箋応需時にはカードを確認し、そこに記載された個別の番号を使ってデータセンターに接続。他薬局で登録された情報を含め患者の調剤情報を一元的に把握した上で、相互作用や重複投与をチェックする。調剤後には、レセコンから出力したQRコードを読み取り、患者に代わって調剤情報をデータセンターに登録する。
電子化し、会員薬局間で共有する調剤情報は、[1]患者の氏名[2]病院名[3]医師名[4]薬局名[5]薬剤師名[6]調剤実施日[7]処方内容――の7種類。
香川県薬会長の安西英明氏(安西番町薬局)は「日薬eお薬手帳の利用が広まりつつあるが、高齢者の多くはスマホを持っていないため、電子お薬手帳を使えない。紙のお薬手帳だけではなく、電子化することによって情報の一元化が進み、相互作用や重複投与をチェックしやすくなる。電子お薬手帳を持たない患者でも、このような関与を実現するために、カードを利用した方法の構築を進めている」と語る。
紙のお薬手帳では、持参を忘れたり、複数に分散したりして調剤情報を十分に一元管理できない場合もある。電子お薬手帳は情報一元化に役立つが、利用していない高齢患者は少なくない。そんな患者でも、薬局薬剤師が介在し調剤情報を電子的に一元化することで医療の安全性を向上できるほか、災害発生時のバックアップとしても電子化情報を活用できるという。
こうした背景から香川県薬は今年度から、地域医療再生基金を原資に香川県から5000万円の補助を得て「調剤情報電子化ネットワーク事業」を開始。日薬eお薬手帳の開発を担当したSTNetと共同で、システム構築を進めている。
その基盤となるのが、日薬eお薬手帳に今年6月に追加された新機能「お薬手帳情報参照サービス」だ。患者がSTNetのデータセンターに保存した電子お薬手帳の情報を、インターネットにつながったパソコンなどを通じて薬局薬剤師が閲覧できるもの。その都度発行されるワンタイムパスワードを患者から教えてもらって閲覧する。日薬会員はこの機能を年間1万8000円で利用できる。このインフラを利用し、今回香川版のシステムを構築することになった。
香川県薬は今月に会員薬局向けの説明会を県内3カ所で計4回開き、参加を呼びかけた。説明会には会員の496薬局のうち248薬局が出席。近く正式な手続きに移行し、会員薬局の半数がこの事業に参加する見通しだ。
参加薬局には今後、QRコードを読み取るリーダーやカードなどを配布する計画。カードは10万枚作成し、「かがやくeカード」(仮称)などの愛称をつけて利用を促す考え。今年度は参加薬局の契約料や利用料は補助金でまかない、費用負担は求めない。来年度以降は「お薬手帳情報参照サービス」の費用に、カードを活用したシステムの費用を上乗せした利用料の負担が発生する見込みだ。