2011年の潜在キャリアは77.7万人
2015年、ジェノタイプ1型のC型慢性肝炎治療薬「ハーボニー(R)配合錠」(一般名:レジパスビル/ソホスブビル配合錠)、ジェノタイプ2型のC型肝炎治療薬「ソバルディ(R)錠」(一般名:ソホスブビル)と相次いで経口のC型肝炎治療薬を発売したギリアド・サイエンシズ株式会社がメディアセミナーを開催。最新治療のほか、疫学的観点や医療経済の観点からのC型慢性肝炎治療の必要性を解説した。
まず初めに、広島大学大学院の田中純子教授が疫学的視点からみたウイルス性肝疾患患者数の経年推移について講演した。日本における肝炎ウイルスキャリアの数は、2002年からの「老人保健法による肝炎ウイルス検診」や2007年からの肝炎無料検査、2008年からの健康増進事業による肝炎ウイルス検診、そして2010年に制定された肝炎対策基本法などで早期発見は進んでおり、2000年前後を境にゆっくりとその数を減らしている。
具体的には、2000年に肝炎ウイルスキャリアの数は300~370万人と推計されていたが、2011年ではそれが210~280万人へと減少している。「ですが、2011年現在でも感染を知らないまま潜在しているキャリアは約77.7万人いると推計されます」と田中教授は語り、検査の必要性を訴えた。
ウイルスのいない肝がんが増えている
続いて講演した山梨大学の榎本伸幸教授は、肝炎治療の最新事情を紹介。肝炎ウイルスが原因による肝がんは減少しつつあるが、それに代わって新たな「ポストウイルス時代の肝臓病が増えている」と警鐘を鳴らす。「それは、生活習慣病です。糖尿病や肥満、アルコールが脂肪肝炎を引き起こし、やがて肝硬変~癌化へとつながるケースが増えてきています」と語った。「新薬によってウイルスが除去されたとしても、生活習慣が悪化することで肝がんのリスクは高止まりしたままになってしまいます。このような非代償性肝硬変に有効な治療の開発が求められます」(榎本教授)
最後にソバルディならびにハーボニーの医療経済的な価値について東京大学大学院の五十嵐中特任准教授が講演した。1錠8万円を超えるとして、一般メディアなどでも取り上げられることの多い新しいC型肝炎治療薬だが、五十嵐准教授は「お金が余計にかかっても、コスト増大分に見合った効果の改善があれば良いのです」と定量化をすることの重要性を語った。そのうえで、ソバルディならびにハーボニーについて、医療経済的に「価値がある」と評価した。
5月に発売されたソバルディはギリアド社にとって、日本で初めて販売する製品。C型肝炎治療において、同社が国内で存在感を示せるかについて、注目が集まっている。