タイからの研修員、日本の機械室に興味津々
日本医療機器産業連合会(医機連)は11月16日、メディアセミナー「日本の医療機器の国際展開」を開催した。医機連国際政策戦略委員会アジア分科会主査の城風淳一氏は、「国際ビジネス推進活動の実際」と題して、タイでの血液透析医療の普及を目指し、東九州メディカルバレー構想特区(大分県、宮崎県)が取り組んでいる産官学連携について講演した。
医機連国際政策戦略委員会アジア分科会主査の城風淳一氏
同特区は2013年から、血液透析領域においてタイとの人的交流を実施。2014年には、タイの医師2人、看護師2人を招き、日本の大学病院などで研修を行ったが、城風氏は、その際に最も関心が高かったのは臨床現場ではなく、機械室だったことを紹介した。
城風氏は「水を浄化して、いかにきれいな透析液をつくっていくかというプロセスに興味を持っていた。タイには臨床工学技士がいないが、今回の訪問がその重要性を理解してもらうきっかけになり、現在は臨床工学技士制度の創設を働きかけている」と話した。タイでの現地調査では、水道水が予想以上に汚れていることが分かり、前処理が課題に挙がっているとしている。
日本の血液透析医療は世界トップレベル
東九州メディカルバレー構想特区は、血液・血管医療を中心とした医療産業拠点づくり特区。その背景として、大分、宮崎の両県に、透析用血液回路セット、透析用の留置針、ダイアライザーそれぞれの国内トップレベルのシェアを持つ3企業と、医療分野に特長を持つ大分大学、宮崎大学、立命館アジア太平洋大学、九州保健福祉大学の4大学が集中して存在している、と城風氏。城風氏によると、日本の血液透析医療は世界トップレベルで、「日本に学びたいというニーズがある」(城風氏)という。
一方、タイでは、血液透析の需要は高く、2012年時点、腎代替療法を受けた患者数約5万8,000人のうち、血液透析患者数は4万人で、全体の約70%に上ったというデータもある。血液透析センターは右肩上がりで増加しており、1996年の45施設から2012年には533施設へと約12倍になっている。
東九州メディカルバレー構想特区がアジアの医療にどのような貢献をするのか、注視していきたい。