米国子会社アバニア社が開発中
大塚製薬株式会社は11月17日、同社の米国子会社であるアバニア社が、主成分であるデキストロメトルファン(DM)を重水素化した新規化合物となる「AVP-786」に関してアルツハイマー型認知症に伴う行動障害の治療薬としての臨床試験(フェーズ3)を開始し、最初の患者登録が完了したと発表した。同試験薬は2015年7月にFDAから「ファストトラック」(優先承認審査制度)の指定を受けている。
AVP-786は、DMを重水素化し、キニジンの投与量を少なくした新規化合物となる配合剤。キニジンは肝臓の代謝酵素(CYP2D6)を阻害し、DMの血中濃度を高め中枢に作用するといわれている。
今回のAVP-786フェーズ3試験は、多施設共同ランダム化プラセボ比較試験で、アルツハイマー型認知症の行動障害を対象に有効性、安全性や忍容性を調べるための試験となる。
アルツハイマー型認知症に伴う行動障害に対する治療薬開発
アルツハイマー型認知症の患者の約半数は、介護者に対する暴言、暴力、錯乱などの行動障害を起こすとされる。行動障害を含む認知症に関連する症状は、介護者の負担を重くし、個人や家族、介護者をひどく苦しめるとして、問題となってきた。これらの行動障害が、認知機能をより急速に低下させ、介護施設への入居や介護者の負担にも関係している。
アバニア社は、現在有効で安全な治療薬が無いこのアルツハイマー型認知症に伴う行動障害に着目。DMに関する治療薬の研究開発を進めてきた。今後の開発については、新規化合物となるAVP-786について米国で2つのフェーズ3を行う予定で、最初となる同試験についてはFDAと相談し、5月より準備をしてきたという。
大塚製薬はアルツハイマー型認知症を重要な疾患領域ととらえており、すでに2つの化合物がフェーズ3の開発段階にある。ここにAVP-786が加わることで、アルツハイマー型認知症のさまざまな医療のニーズ(病態進展抑制、認知力低下抑制、行動障害改善)をカバーできるようになると、今後の研究開発に期待が寄せられている。
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・大塚製薬株式会社 ニュースリリース