「障害者差別解消法」施行を前にADHDの認知度を高める必要性が浮き彫りに
日本イーライリリー株式会社は11月16日、大人の注意欠如・多動症(ADHD)を取り巻く環境の現状・課題を明らかにすることを目的に、20代~60代の男女400名(発達障害と診断されたことがある人を除く)を対象に、インターネット調査を実施し、その結果を発表した。
画像はリリースより
ADHDは、不注意、多動性、衝動性を特徴とする症状がみられる発達障害の1つで、近年、成人のADHD当事者の存在と日常生活における困難に注目が集まっている。小児期に ADHDと診断された患者のうち、約50~70%は成人期(18歳以降)にまで症状が持続することが示唆されている。成人ADHDの有病率は世界全体では平均3.4%と報告されており、日本国内の調査における有病率の推定値は1.65%と言われている。
こうした状況の中、障害の有無に関わらず、個性を尊重し合いながら共生する社会の実現を目指した「障害者差別解消法」が2016年4月に施行される。これにより、日常生活に困難を感じている当事者への社会的サポートの更なる推進が期待されるものの、同調査ではADHDの認知度は5割強にとどまり、まずはADHD自体の認知を高めることの必要性が浮き彫りとなった。
ADHDという言葉を知っていても約9割が適切な対応を「知らない」と回答
今回の調査の結果、ADHDという言葉を知っている人は54.8%、言葉を知っていても大人になってからADHDであることに気づくこともあることを「知らない」と回答した人が32.4%おり、さらに約9割がADHDに対する適切な対応を知らないと回答した。さらに、ADHDという言葉を知っていると回答した人の中で、大人のADHDの症状として認識が最も低かったのは「衝動買いをしてしまう」となり、また、大人のADHDを抱える人が困っていると思うことは「外見上は障害があることがわかりにくい」という結果になった。
また、全体の8割以上が外見ではわからない「目に見えない障害」への社会配慮は「不十分だと思う」「どちらかといえば不十分だと思う」と回答、周囲がサポートするために「疾患についての理解を深めること」が必要だと回答した人も73.8%に及んだ。さらに「障害者差別解消法」が自分の生活に関係があると思っている人は約3割にとどまったという。
同調査を監修した東京都立小児総合医療センターの市川宏伸顧問は「ADHDを子どもの頃に見過ごされ、成人になって社会に出てから会社などでのミスが多発することで症状が顕在化し、結果的に2次障害(うつ病や不安障害等)を患い来院されるというケースが少なくありません。ADHDに気付かないまま、仕事や人間関係に悩み続けている当事者がよりよく生きてゆくために、一般の方々もADHDに対する理解を深めていただくことを期待したい」とコメント。
さらにNPO法人発達障害をもつ大人の会の広野ゆい代表も「来年4月に施行される障害者差別解消法をはじめ法整備もなされてきているものの、今回の調査からも関心は依然として高いとは言えず、周囲の方々の理解なくして、現状を変えることはできないと思っています。ADHD当事者が自分からも積極的に情報を発信できるような、それぞれの個性が輝ける社会の実現を、切に願っています」とコメントしている。
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