開発中の潰瘍性大腸炎治療薬「AJM300」の有効性を確認
東京医科歯科大学は11月13日、同大大学院医歯学総合研究科 消化器病態学分野の渡辺守教授を医学専門家とする研究グループが、前期第2相臨床試験により、新規の潰瘍性大腸炎治療薬が中等症の潰瘍性大腸炎患者に有効であるという結果が得られたことを発表した。この臨床試験には全国42の施設が参加。日本で潰瘍性大腸炎の新しい治療薬が開発されるのは十数年ぶりとなる。
画像はリリースより
同研究は、新規の潰瘍性大腸炎治療薬として開発中であるAJM300の有効性、安全性を調べるための第2相臨床試験として実施された。同剤は味の素製薬株式会社が開発した薬剤で、リンパ球の腸管への遊走に必須の分子であるα4 integrinを阻害する経口薬。同様の作用機序を持つ抗体製剤は海外では既に炎症性腸疾患治療に用いられているが、同剤は世界で初めての経口薬となる。
研究グループは、中等症の潰瘍性大腸炎患者102名を、治療薬もしくはプラセボに無作為に割り付け、8週間投与。その結果、有効率はプラセボ群で25.5%であったのに対して、治療薬群では62.7%と有意に高率だった。また、臨床的寛解率、内視鏡的寛解(粘膜治癒)率も、治療薬群でプラセボ群よりも高率で、試験期間中に重篤な有害事象は認めなかったという。
潰瘍性大腸炎患者にとっての福音となることへ大きな期待
潰瘍性大腸炎は、大腸に慢性の炎症が起こる疾患で、原因は明らかになっていない。国内においても患者数は増加しており、現在国内に約16万人の患者がいると言われている。治療には、5-アミノサリチル酸製剤・副腎皮質ステロイド薬・免疫調節薬・抗TNFα抗体製剤などが用いられているが、これらの治療で改善しない患者も多く、新しい薬剤の開発が望まれている。
日本で開発された潰瘍性大腸炎治療薬の臨床試験をオールジャパン体制で実施し、中等症の潰瘍性大腸炎患者において有効性を示す結果が得られたことによって、日本から新しい潰瘍性大腸炎治療薬を世界に向けて発信できた。今後、同剤が潰瘍性大腸炎治療の新たな選択肢になることが期待される。
なお、同研究成果は、消化器病学における世界のトップジャーナルである「Gastroenterology」に8月28日付でオンライン速報版が公開され、12月号に完全版が掲載される予定だ。
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・東京医科歯科大学 プレスリリース