哺乳類の日周性酵素活性の振動メカニズムを解明
東邦大学は11月13日、同大医学部細胞生理学分野の田丸輝也講師と、東京大学大学院理学研究科化学専攻の小澤岳昌教授の研究チームが、マウスの皮膚、脳、肝臓などの細胞・組織を用いた研究で、哺乳類の体内時計を駆動する日周性酵素活性の振動メカニズムを解明したと発表した。
画像はリリースより
全身の細胞で時を刻む体内時計は、様々な生理機能が最適な時刻に働くベースとなる。現代社会のライフスタイルによる体内時計の乱れは、生活習慣病、がん等の様々な疾患の増加の一因となっている。体内時計は、いくつかの時計タンパク質で構成される中核ループと、複数の調節ループが互いに歯車(ギア)として巧みに噛み合って、1日周期で作動している。
現代社会における夜型化、グローバル化は、人類史上かつてないほど体内時計を攪乱しており、長い進化の末に獲得した体内時計をベースとした適応防御プログラムに作動不全をもたらしている。その結果、生活習慣病、がんなどの様々な疾患のリスクを高めていると考えられており、体内時計の作動メカニズムにおけるクリティカルな調節シグナルを理解することは、現代医学における重要な課題となっている。
睡眠障害や生活習慣病などの予防や改善、治療法の確立につながる可能性
今回、研究グループは、体内分子時計の複数の歯車を連動させるクリティカルな歯車(調節ループ)として、CK2という酵素による時計タンパク質BMAL1の日周性リン酸化反応のプロセスを、光を利用したリアルタイム測定などで捉え、日周性酵素反応の振動メカニズムを解明。その結果、この振動には、時計タンパク質CRY(クリプトクローム)による酵素活性の抑制が重要な役割を果たしていることが明らかになったという。
今後は今回の成果をもとに、日周性リン酸化振動システムをターゲットにした体内時計の調整法を開発する予定。現代人のライフスタイルの変化や多様化(夜型生活、シフトワーク、グローバル化など)による体内時計の機能不全を要因とする睡眠障害や、糖尿病、循環器系疾患などの生活習慣病やがんをはじめとした様々な健康問題、疾患の予防、改善及び治療に役立てられることが期待される。
なお、同研究成果は、11月12日付で米国科学誌「PLoS Biology」に掲載された。
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