■薬局、ドラッグで傾向強く
調剤薬局を志望する薬学生の半数以上が、入社応募のエントリー社数を1社に限定していることが、薬剤師国家試験予備校「薬学ゼミナール」が行った学生向け就職動向調査で明らかになった。特にドラッグストア志望者に関しては、エントリー社数を1社に絞り込む割合が65%とその傾向が強く、新卒薬剤師採用の売り手市場が加速している。2016年度卒学生から就職活動、選考の解禁日が後ろ倒しになったことも影響したとみられる。企業側の人材確保に向けては、早期段階から学生に対するアプローチを行い、エントリーへとつなげる仕組みづくりの重要性が高まっている。
薬ゼミでは、薬学生の就職動向を把握するため、薬ゼミオンラインに登録した既卒生と6年生2586人を対象としたインターネットによるアンケートを行った。回答者のうち、内定獲得者は全体の55.7%となっている。
調剤薬局をエントリーした学生は、回答者全体の28.7%を占め、1人当たりの平均エントリー社数は2.1社となった。エントリー社数「1社」は53%に上り、「1~3社」では87%と9割弱を占めた。
調剤薬局のエントリーを1社に限定した学生のうち、約68%が説明会への参加社数を「1社」と回答した。さらにそのうちの64%が、そのまま次の面接に進んでいた。エントリー段階で志望企業を厳しく絞り込み、その後も説明会や面接で企業の特徴や雰囲気をかぎ取りながら、慎重に就職先を判断する傾向がうかがえる。
ドラッグストアを志望する学生になると、志望企業の絞り込みがさらに強くなる。エントリー数「1社」は65%に上り、「3社以内」になると92%の高い比率に跳ね上がる。平均エントリー社数は1.7社で、ほぼ“逆指名”に近い結果となった。
日本経済団体連合会のルールにより、16年卒学生から採用情報や説明会情報の解禁が、薬学部5年生の3月と従来に比べ、3カ月後ろ倒しになった。内定辞退の「経験あり」は、昨年夏に実施した調査の約3割から約14%に減少しており、決め打ち傾向が強い。そのため、企業側が優秀な人材を獲得するためには、就職活動前にいかに自社をPRしていくかが重要になりそうだ。
内定獲得者の就職活動開始時期を見ると、最も多かったのが「今年3月」で、調剤薬局、ドラッグストアの内定獲得者共に3割を占めた。逆に1~2月は就職活動を開始する学生が少なく、5月以降から開始する学生に関しては内定獲得者が少なかった。エントリー、説明会に参加する決め手は「就職サイトの情報」が60%、「企業ホームページ」が30%とインターネットを通じて、志望企業に関する情報を収集していた。
身近な存在にも自社の特徴を浸透させる必要もありそうだ。就職先を相談する相手は、「家族(親・兄弟)」が昨年調査と同様に55%と高く、「友人」が43%、「自分で決める」が29%、「大学の先生」が28%、「先輩」が20%となった。昨年夏の調査結果では、「先輩・友人」を相談相手とする割合が56%だったが、今回は63%と7ポイント上昇した。
採用が進むにつれて、学生が重視するポイントとして、「人事担当者」という要素も浮き彫りになっている。説明会に参加して良かった点と残念だった点をそれぞれ挙げてもらったところ、「人事担当者の対応や説明」が双方で約2割を占めた。内定を断った理由についても、人事担当者に関連した回答が2割強で見られた。
医学アカデミー薬ゼミトータルラーニング事業部の林正和氏は「就職活動開始時期が変わったことで、企業の採用アプローチを早くしないと優秀な人材に来てもらえなくなっている。より多くの学生にエントリーしてもらう仕組みに加え、学生が就職先を選ぶ基準でもある人事担当者の選別や育成を図る必要がある」と話している。