治療後2か月で寝たきりから寝返り、歩行練習開始
自治医科大学は11月11日、小児神経難病の1つである芳香族Lアミノ酸脱炭酸酵素(AADC)欠損症患者2名に対し、2015年6月と7月に国内初の遺伝子治療を行い、その効果の発現を報告した。
画像はリリースより
今回の治療は、日本医療研究開発機構(AMED)の成育疾患克服等総合事業において、同大学小児科学教授の山形崇倫らにより、実施された遺伝子治療。アデノ随伴ウィルス(AAV)ベクターを用いた遺伝子治療である。
治療を受けた患者は、2名とも副作用はなく、全身が強直してしまうジストニア発作が消失、運動機能の改善がみられているという。うち1名は、寝たきりの状態から、治療2か月後に寝返り、支えられてのおすわり、手を伸ばしてつかむことなどができるようになり、治療3か月後には歩行練習を開始しているとのことだ。
日本では6例が診断、今後は患者を早期に診断する体制を整備中
AADC欠損症は、生まれつきAADC遺伝子の変異により、AADCが働かなくなる常染色体劣性遺伝性の疾患。現在、世界中で100例程度、日本では6例が診断されている。典型例は生後1か月以内に発症し、眼球が上転する発作や全身を硬直させる発作がみられる。自発的な運動は少なく、首もすわらず、ほとんどの患者が生涯寝たきりの生活を送る。
これまで確立した治療法はなかったが、台湾では2012年にAADC欠損症に対する遺伝子治療が実施され、運動機能の改善がみられたという結果が報告されていた。
AADC欠損症と診断されている日本人患者は他に4名おり、同大学は今後も遺伝子治療を実施する予定。また、この6名以外にも脳性麻痺と考えられ、AADC欠損症であると診断されていない患者がいると考えられる。そのため、同大学ではさらに、患者を早期に診断する体制を整備中だ。
今回、AADC欠損症に対するAAVベクターを用いた遺伝子治療の有効性が示唆されたことで、未だ治療法が無い多くの難治性小児神経疾病の治療法の開発に期待がよせられる。