卵胞液成分によるDNA損傷誘導メカニズムを解明
東北大学は11月11日、同大大学院医学研究科の八重樫伸生教授、豊島将文助教らの研究グループが、卵胞液に含まれる鉄イオン輸送タンパク質トランスフェリンが卵管上皮細胞でのDNA損傷に関与することを発見したと発表した。この研究成果は、英科学誌「Oncogene」に11月9日付で掲載されている。
画像はリリースより
卵巣がんは国内において年間9,000人ほどが罹患しており、その由来によって上皮性・間質性、性索間質性、胚細胞の由来と分類される。上皮性・間質性がんの1つである悪性卵巣漿液性腺がんは卵管から発生すると考えられており、卵管上皮が卵胞液へさらされることが発がんに関わっている可能性が示唆されていた。
卵巣がん発生の詳細なメカニズム解明へつながるか
今回、研究グループは、鉄イオンが触媒するフェントン反応がDNA二重鎖切断を引き起こすこと、そして鉄イオンを細胞に供給するタンパク質であるトランスフェリンが卵胞液中に含まれていることに着目。ヒト卵管上皮細胞及びマウス卵管組織を用いて、トランスフェリンが細胞にDNA二重鎖切断を引き起こすことを実験的に証明した。
また、トランスフェリンが細胞内に取り込まれ、細胞内でフェントン反応を誘導することがDNA二重鎖切断を引き起こすメカニズムであることも明らかになったという。トランスフェリンは、様々なタンパク質の合成に必要な鉄イオンを供給する生命維持に必須の分子だが、その一方、細胞においてDNA損傷を起こし得る分子であることも同研究によって証明された。
今回の研究成果は、生体活動の維持に必須のタンパク質であるトランスフェリンがDNA損傷を引き起こすことを証明した重要な報告であり、いまだ不明な点が多い卵巣がん発生の詳細なメカニズム解明や、将来的には卵巣がんの予防、早期発見へつながることが期待される。
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