膵がん患者でアポリポプロテインA2アイソフォームが低下
国立がん研究センターは11月9日、同研究所創薬臨床研究分野の本田一文ユニット長らの研究グループが、血液中のアポリポプロテインA2(apoA2)というタンパク質のアイソフォームが早期膵がんや膵がんリスク疾患で低下することを発見、米国国立がん研究所(National Cancer Institute:NCI)との共同研究においても、既存のバイオマーカーに比べて高い精度で早期膵がんを検出できることを確認したと発表した。
画像はリリースより
膵がんは早期発見が困難であり、他のがんと比べても予後不良と言われている。膵がんの治療成績の向上には、血液検査などによって早期膵がんや膵がんのリスクが高い膵管内乳頭粘液性腫瘍、慢性膵炎などの疾患をスクリーニングし、画像検査などによる精密検査で病変を捉える早期診断法の開発が必要とされてきた。
研究グループは2012年に、質量分析の結果から、apoA2アイソフォームが膵がんや膵がんリスク疾患の患者で低下することを見出し、報告している。今回、NCIとの共同研究において、米国の早期膵がん患者(I期、II期膵がん98例)を含む252例の血液を用いてapoA2アイソフォームを測定し、盲検下での確認試験を行った。その結果、健常者に比べ早期膵がん患者でapoA2アイソフォームが低下していることが確認され、既存の膵がんバイオマーカーであるCA19-9と比べて高い精度でI期、II期膵がんを検出できることも確認されたという。NCIは、apoA2アイソフォームを膵がんにおける信頼性の高い血液バイオマーカーなりうる可能性があると評価している。
ApoA2アイソフォーム測定の実用化に向け、検査キットの開発にも成功
さらに同研究グループは、ApoA2アイソフォーム検査を実用化するために簡便な検査法の開発に取り組み、検査キットの作製に成功。国内多施設共同研究で集められた膵がんを含む消化器疾患患者と健常者の血液検体(膵がん286例を含む合計904例分)を、同検査キットで測定し、その判別性能を検討した結果、既存の膵がんバイオマーカーであるCA19-9に比較してより高精度に早期膵がんを検出したという。
同研究所は現在、膵がん検診の効率化を目指した血液バイオマーカーの実用化を目的に、神戸大学などと協力して「apoA2 アイソフォームを用いた膵がん模擬検診」を開始する予定。この模擬検診を含めた更なる研究により、apoA2アイソフォームの検査が本当に早期膵がんや膵がんリスク疾患を適切にスクリーニングでき、検診に実用化できるかどうかを確認していくとしている。また、同検査キットは研究用試薬であり、今後、体外診断薬としての承認を得ることも目指すという。
なお、同研究成果は、英オンライン科学誌「Scientific Reports」に11月9日付で掲載されている。
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・国立がん研究センター プレスリリース