肺動脈高圧症を含めた炎症性疾患への導出、アイガー社が臨床試験を開始
日本化薬株式会社は11月10日、米国のアイガー バイオファーマシューティカル社と、日本化薬が製造販売している抗悪性腫瘍剤「ベスタチン(R)カプセル」(一般名:ウベニメクス)のロイコトリエンB4(LTB4)が関与する肺動脈高血圧症(PAH)を含めた炎症性疾患への導出に関するライセンス契約を締結し、アイガー社が米国において臨床試験を開始することになったと発表した。
同剤は、LTA4をLTB4へと変換するロイコトリエンA4加水分解酵素(LTA4H)を阻害することが知られている経口投与低分子化合物。現在、国内においては「成人急性非リンパ性白血病に対する完全寛解導入後の維持強化化学療法剤との併用による生存期間の延長」の適応症として承認を取得し、既に25年以上にわたって製造販売されている。
動物モデルにおいて可逆的なPAH治療効果を確認済み
PAHは、心臓から肺に血液を送るための血管である肺動脈の圧力が異常に上昇する疾患だが、病気の発症原因は解明されていない。根本的な治療法も見出されていない事から、日本国内においては難治性呼吸器疾患(指定難病)に認定されている。
スタンフォード大学の研究者が「サイエンス トランスレーショナル メディスン」誌にて発表した研究によると、ヒトのPAH患者およびPAH動物モデルのいずれでもLTB4およびLTA4Hが上昇しており、またLTB4が上昇することによる炎症症状の結果として細動脈閉塞や高血圧が生じる事がPAH動物モデルにて確認されている。また、同剤が有するLTB4を介した薬理阻害作用によって、閉塞した細動脈が開き、心機能が改善し、生存期間が延長するといった可逆的なPAH治療効果が動物モデルにおいて確認されているという。
同社は、今回のライセンス契約によって、早期に開発が成功し、PAH患者やその家族、医療関係者に貢献していきたいと伝えている。
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・日本化薬株式会社 プレスリリース