開発中のFLT3阻害剤の臨床試験を2016年度に米国で実施
富士フイルム株式会社は11月10日、再発・難治性の急性骨髄性白血病(AML)の患者に対する抗がん剤「FF-10101」の臨床試験を、2016年度に米国で実施することを決定したと発表した。
AMLは血液腫瘍の一種で、血球を作る造血幹細胞の異常により造血幹細胞ががん化し、そのがん化した造血幹細胞である白血病細胞が骨髄中で増殖して十分な量の血球を作ることが出来なくなった結果、血球減少を引き起こすとともに、増殖した白血病細胞が骨髄外の組織に入り込んで障害を引き起こす難治性疾患。約3割のAML患者には、造血幹細胞の増殖に関与するタンパク質であるFLT3に遺伝子内縦列重複(ITD)変異や、チロシンキナーゼドメイン(TKD)変異が起こり、それら変異したFLT3によって白血病細胞が増殖することが認められている。
このような中、現在、FLT3の働きを阻害することで白血病細胞の増殖を抑制するFLT3阻害薬の開発が進められている。しかしFLT3阻害薬は、ITD変異を持つ白血病細胞に対しては一定の効果があるものの、TKD変異を持つものに対しては効果が大きく減弱することが一般に知られている。
マウス試験において、ITD変異やTKD変異を持つ白血病細胞を大幅に減少
FF-10101は、富士フイルムが写真フィルムなどで培った、高い化合物の合成力、設計力を活かして創製した新たな医薬候補品。FLT3に含まれるアミノ酸と結びついて不可逆的に結合することで、FLT3の働きを阻害するFLT3阻害薬だ。すでにマウスモデルでの非臨床試験では、ITD変異やTKD変異を持つ白血病細胞を大幅に減少させ高い効果を示しており、ヒトでの有効性が期待されているという。
また同剤は、平成26年度科学技術振興機構の産学共同実用化開発事業(NexTEP)に採択されている。この事業において富士フイルムは、名古屋大学の清井仁教授と、患者の細胞を用いたFF-10101の有効性や安全性の解析・検証に関する共同研究を実施。今後、共同研究による成果も臨床試験に活用し、同剤の開発を加速させていくという。
なお、同剤に関する最新の研究成果は、今年12月に米国・フロリダ州で開催される、世界最大の血液学会「American Society of Hematology」の第57回年次総会にて発表する予定としている。
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・富士フイルム株式会社 プレスリリース