再生医療を実施する自由診療クリニックの規制に一石
国立精神・神経医療研究センター(NCNP)は11月9日、自由診療による「再生医療的行為」に警鐘を鳴らす、世界的に稀有な裁判例を分析・報告した研究成果を発表した。これは、同センタートランスレーショナル・メディカルセンター臨床研究支援部の一家綱邦室長、および京都大学iPS細胞研究所上廣倫理研究部門の藤田みさお特定准教授、八代嘉美特定准教授、ならびに京都府立医科大学法医学教室の池谷博教授らによる共同研究の成果である。
同研究は、国内外で問題になっている、幹細胞治療を再生医療として自由診療の下で実施するクリニックに対して、クリニックで再生医療を受療した患者が、身体状況が悪化したこと、医師の説明義務違反があったことを理由に訴え、患者が勝訴した事件判決を考察・分析したもの。このような判決は国内だけでなく、世界的に前例がないと推定され、再生医療を実施する自由診療クリニックに対する規制のあり方に一石を投じるものだという。
法規制のあり方の再考、専門家集団・医療者・患者の連携求める
日本で制定・施行されている再生医療安全性確保法は、法規制の形式態様としては医療行為に対する事前規制だが、それに加えて事後規制としての民事・刑事・行政事件の活用可能性を示したのが、東京地方裁判所の2015年5月15日判決(Xクリニック事件判決)であると研究グループは考察。また、事前・事後いずれの法規制にも限界はあり、その限界を克服するために専門医団体、医療職一般、患者にも努力が求められることを示している。
同研究グループは、国内外の自由診療クリニックによる問題のあると考えられる再生医療が少しでも抑制され、各種報道を通じて仄聞するような受療者の被害がなくなることを望んでいる。今回の研究の発表を通じて、この問題が広く社会に認識されること、特に特定認定再生医療等委員会の再生医療提供計画の審査において参考にされることや、法規制のあり方の見直しの一助になることを願うと述べている。
なお、同研究成果は米科学誌「Cell Stem Cell」オンライン版に、11月6日付で公開されている。
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・国立精神・神経医療研究センター プレスリリース