超音波検査を用いた乳がん検診に関する世界初となる大規模RCT
東北大学は11月5日、同大大学院医学系研究科の大内憲明教授らのグループが、40歳代女性を対象に乳がん検診における超音波検査の有効性を検証するための比較試験を実施し、その主要評価項目(感度、特異度、がん発見率)に関するデータを公表した。
画像はリリースより
近年、世界的に乳がんが増加し、日本でも乳がんによる死亡率が急増中だ。乳がんのリスク因子には様々なものがあるが、早期に発見して治療を行うことが重要だとされている。乳房をX線で撮影するマンモグラフィは、乳がんの早期発見に用いられており、死亡率減少効果が証明されている唯一の乳がん検診方法。しかし、若年女性や高濃度乳房における有効性は、50歳以上の年齢層と比較して十分とは言えない。
そこで研究グループは、マンモグラフィ検診と比べた乳房超音波検査の利益・不利益を検証するため、「乳がん検診における超音波検査の有効性を検証するための比較試験(Japan Strategic Anti-cancer Randomized Trial:J-START)」として、40歳代の女性を対象とした大規模なランダム化比較試験(RCT)を計画し実施したという。
マンモグラフィに超音波を加えることで早期乳がんの発見率が約1.5倍に
この調査は、2007年7月から2011年3月にかけて、全国42の研究参加団体を通じ、76,196人の女性に参加同意を得て施行された。参加者は、参加同意後に1:1の割合でマンモグラフィに加えて超音波検査を実施するグループ(介入群)と、通常のマンモグラフィ検診を実施するグループ(コントロール群)にランダムに割り振られた。割り振られた検査方法で、初回とその2年後の検診を受診する研究デザインである。
同論文では、主要評価項目として感度・特異度・がん発見率、初回検診における発見乳がんのステージ分類を報告。介入群では感度91.1%(95% CI [87.2-95.0])、コントロール群では感度77.0%(95% CI [70.3-83.7])であり、有意差を持って介入群で感度が上昇した (p=0.0004)。乳がん発見数、発見率においても介入群で有意に高値だったという(介入群:184(0.50%)vsコントロール群117(0.32%)(p=0.0003))。発見がんのステージ別評価では、ステージ2または3以上の発見がん数は、介入群、コントロール群で差は見られず、超音波検査はステージ0 or 1のがんの発見に寄与していることが明らかになったという。
一方で、介入群では要精検率が有意に上昇(12.6% vs 8.8%)、侵襲的な追加検査(針生検等)の施行数も増加しており、検診の不利益も増加。今後、超音波検診導入による利益と不利益との相対バランスを厳密に検討することが不可欠だと研究グループは述べている。
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