エボラ出血熱発生国で初めての臨床試験を開始
米国のジョンソン・エンド・ジョンソン(以下J&J)は10月9日、医薬品部門であるヤンセンファーマシューティカルが開発中のエボラ出血熱予防ワクチンの安全性および免疫原性を評価するシエラレオネでの臨床試験を開始したと発表した。
この臨床試験では、現在被験者の登録が進行中で、最初の被験者に対する初回のワクチンが投与されたという。最近のエボラ出血熱流行の影響を受けている西アフリカの一国において、ヤンセンのエボラ出血熱に対するプライムブーストワクチンの臨床試験が実施されるのは今回が初めてとなる。
今回の臨床試験である「EBOVAC-Salone」は、シエラレオネのカンビア地区で実施される予定。この地域ではエボラ出血熱の最新症例が数件報告されており、試験で使用されるワクチンは、ヤンセンのグループ会社であるCrucell Holland B.V.社のAdVac(R)技術およびBavarian Nordic社のMVA-BN(R)技術に基づいた2つのワクチンを組み合わせたもの。試験では免疫持続期間の増強、最適化を目的として、1回目のAdVac投与をプライム(初回免疫)に、2か月後の2回目のMVA-BN投与をブースト(追加免疫)に用いる。
必要に応じて合計200万回分のワクチン生産も可能に
J&Jは、2014年10月にエボラ出血熱に対する取り組みを発表して以来、シエラレオネなどエボラ出血熱感染の影響を受けた国々の公衆衛生ニーズに対応するため、多くの資源を投入、エボラワクチンの研究開発を進めている。
今年に入り、ヤンセンが他の企業や研究機関とのパートナーシップおよびコンソーシアムを構築、欧州および米国の公的機関から資金提供を受け、米国、欧州、アフリカ各地で複数の第1相および第2相試験を開始した。さらに、ヤンセンはBavarian Nordic社との提携により80万回分以上のワクチン増産を迅速に実現するとともに、必要に応じて合計200万回分のワクチン生産も可能にしている。
これまで、エボラウイルスに対するワクチンや治療薬、治療法で認可されたものはない。西アフリカでのエボラ出血熱の発生は2014年3月に始まり、シエラレオネ、リベリアおよびギニアの医療体制には、重大な負荷がかかっている。現在までに、3か国全域で2万8,400人を超える人々がウィルスに感染、1万1,300人を超える人々が死亡しており、特にシエラレオネでは約1万4,000例のエボラ出血熱が報告されており、約4,000人が死亡している。
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・ヤンセンファーマ株式会社 プレスリリース