■国内製薬大手は復調傾向に
国内製薬大手4社の2016年3月期中間決算が10月30日、出揃った。前期に有形固定資産の売却益を計上した武田薬品は増収減益となったが、アステラス製薬と第一三共は二桁の増収増益、エーザイも主力品のアルツハイマー病治療薬「アリセプト」が特許切れして以来、5年ぶりに増収増益を達成した。通期は、4社が揃って増収増益を予想しており、国内大手は復調傾向にあるといえそうだ。アステラスと武田は、海外売上比率が60%台半ばにまで拡大するなど、海外シフトの事業構造を一段と加速している。
武田薬品は、グローバルで販売する主力の降圧剤「カンデサルタン」や糖尿病治療薬「ピオグリタゾン」、プロトンポンプ阻害剤(PPI)「ランソプラゾール」などの特許切れ影響をほぼ克服しつつある。昨年6月に発売し、年間売上20億ドルを期待する潰瘍性大腸炎治療剤「エンティビオ」が、前年同期比5.5倍の360億円と急拡大。逆流性食道炎治療剤「デクスラント」や降圧剤「アジルバ」も二桁の伸びを示し、新製品の貢献で6%台の増収となった。
特に海外売上が13%増と大きく伸びた。ただ、足下の国内市場は長期収載品の売上減をカバーできず、4%減の減収となった。米国とアジアを中心とした海外売上比率は61.9%と前年同期比で4.1ポイント上昇した。
エーザイは、5年ぶりの増収増益を達成し、アリセプトとPPI「パリエット」の特許切れで長らく苦しんできたが、ここにきて業績の底を脱した格好。国内は4%減となったが、通期では増収を達成できる見通し。グローバル展開する抗癌剤「ハラヴェン」「レンビマ」も順調に推移しており、2%台の増収を確保した。
最も好調だったのがアステラス。抗癌剤「エンザルタミド」が成長ドライバーとして牽引し、15%台の増収となった。エンザルタミドは、化学療法未治療の前立腺癌患者で拡大し、世界の全地域で売上倍増を達成した。泌尿器の過活動膀胱治療薬「ベシケア」「ミラベグロン」も順調に推移した。
国内市場でも新製品の伸びにより、長期収載品の減少をカバーし、4%台の増収となった。海外では国内を上回る成長を達成し、海外売上比率は64.1%と前年同期から4ポイント上昇した。
印子会社「ランバクシー・ラボラトリーズ」を売却し、再スタートを切った第一三共は、売上のおよそ3分の1を占める降圧剤「オルメサルタン」が増収となり、11%の大幅成長となった。同じくグローバル製品の抗血小板薬「プラスグレル」も30%増と寄与した。
国内で見ると、2%増の増収となった。オルメサルタンは競争激化で売上を落としたが、既に主力品とな
ったPPI「ネキシウム」とアルツハイマー病治療薬「メマリー」が共に20%成長と勢いが続いている。
米国は、子会社の第一三共インクとルイトポルドが増収で折り返した。ただ、来年秋にオルメサルタンの米国特許切れを控え、事業構造の転換が急がれる中、大型化を期待する抗凝固薬「エドキサバン」は世界売上52億円と立ち上がりに時間がかかっている。
利益面では、武田が特殊要因で減益となったが、その他は増益を確保した。アステラスと第一三共は二桁増収で大幅な増益となった。
通期も引き続き好調を持続する見込みで、武田は前期の赤字決算から1000億円台の黒字転換、アステラスは二桁の増収増益、第一三共とエーザイは増収増益を予想する。
表:国内製薬大手4社の2016年3月期中間決算