免疫応答のレベルをごく微量の血液から定量評価
岡山大学は10月23日、がん患者の体内で誘導されるがん細胞に対する免疫応答のレベルを、ごく微量の血液から定量評価する新技術を開発したと発表した。
画像はリリースより
この研究は、同大学大学院自然科学研究科(工)生命医用工学専攻の二見淳一郎准教授と東京大学医学部附属病院、川崎医療福祉大学、株式会社メディネットの共同研究グループによるもの。研究成果は「Bioconjugate Chemistry」電子版に9月10日付で公開された。
がん免疫治療の現場では、腫瘍サイズだけでは治療効果の評価が困難であるため、腫瘍免疫応答の活性化レベルを評価する診断薬が求められている。研究グループは、がん細胞内で異常に発現し、免疫系から異物として認識される「がん抗原タンパク質」に対して、腫瘍免疫応答の結果として抗がん抗原抗体の血中濃度が増加することに着目。抗がん抗原抗体を定量測定する診断薬開発に取り組んだ。
独自開発に成功した可溶化技術を活用
これまで多くのがん抗原タンパク質は不溶化しやすい問題点があった。そこで同研究グループは、がん患者の血液中に出現する抗がん抗原抗体を高感度に検出する新技術を開発。独自開発に成功した可溶化技術の活用で、全長・水溶性がん抗原タンパク質を用いた高感度抗体検査試薬により、がん免疫治療における腫瘍免疫応答の定量評価が可能なことが確認されたという。
さらに、今回の研究の手法で調製した抗体検査試薬を用いて、がん免疫治療が奏功した例では、より高い抗がん抗原抗体価の上昇が確認され、同技術の有用性が確認されたという。
研究グループは今後、この技術ががん免疫治療や関連の医薬品開発における重要なツールとして役立つものとして、がん免疫治療の診断薬としての完成・実用化を急ぎたいとしている。
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・岡山大学 プレスリリース