正常上皮細胞が持つ免疫系を介さない「抗腫瘍能」に着目
北海道大学は10月26日、同大遺伝子病制御研究所の藤田恭之教授らの研究グループが、正常上皮細胞が持つ「抗腫瘍能」に焦点を当て、がん予防薬の発見につながる低分子化合物スクリーニングアッセイ系の構築に、世界で初めて成功したと発表した。
画像はリリースより
現在、日本人の3人に1人ががんで亡くなるが、その治療効果を向上させるには、がんをより早期に見つけ、予防的に治療することが望まれる。しかし、科学的に効果が実証された、がんを予防するための薬は存在していない。
また、ヒトに悪性のがんが生じる際には、複数のがん原性変異が細胞に蓄積することが知られている。多くの場合、私たちの身体には、少数の変異を持った「がん前段階」の細胞が存在しているが、それらを予防的に排除する治療法はまだ見つかっていない。研究グループは、がんの超初期段階においては、正常細胞は隣接する変異細胞を認識し、それらを積極的に排除する能力があることを最近の研究で明らかにしてきていた。
正常細胞層からの変異細胞の排出を促進することも確認
今回、同研究グループはこれまでの研究で独自に樹立した哺乳類培養細胞系を用いて、正常上皮細胞が持つ「抗腫瘍能」を亢進させる低分子化合物を同定するスクリーニング系の確立に取り組んだ。また、スクリーニングによって同定された低分子化合物の効果は、哺乳類培養細胞系とマウスの器官培養系で確認した。
その結果、正常細胞層からの変異細胞の排除を促進する効果を持つ低分子化合物のスクリーニング系の確立に成功。また、この系を用いてスクリーニングを行い、抗腫瘍抗生物質の一種であるレベッカマイシンの誘導体であるVC1-8を同定し、VC1-8が変異細胞の排除を促進する効果を有していることを確認したという。
研究グループは、今回発表した研究をさらに発展させることによって、近い将来がん予防薬の発見につながり、薬でがんを予防していくことが期待できるとしている。
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