EZH2のリン酸化による活性抑制が耐性獲得の鍵に
自治医科大学は10月27日、同大分子病態治療研究センター・幹細胞制御研究部の菊池次郎准教授、古川雄祐教授らの研究グループが、多発性骨髄腫の抗がん剤耐性に関わるエピジェネティクス制御メカニズムを発見したと発表した。
多発性骨髄腫は血液がんの一種で、きわめて予後不良の疾患。治療には抗がん剤が用いられるが、患者は次第に抗がん剤に耐性となり、現在も完治に至る治療法が確立されていない。抗がん剤耐性の克服は重要な課題だが、そのメカニズムは未解明のままだった。
今回、研究グループは、抗がん剤耐性を人工的に再現する培養システムを考案し、遺伝子発現制御に関わるエピジェネティクス変化を網羅的に解析した。その結果、エピジェネティクス制御因子であるヒストンメチル化酵素EZH2のリン酸化による活性抑制が耐性獲得の鍵となることを明らかにしたという。
同定した阻害薬の臨床応用へ向け、臨床研究支援センターと協力
そこで、EZH2へのリン酸化を抑制する阻害剤について探索を進めた結果、骨髄腫細胞の抗がん剤耐性を抑制し、抗がん剤耐性となった骨髄腫モデルマウスに対しても治療効果を示す阻害薬を発見したという。
この研究は、多発性骨髄腫の抗がん剤耐性におけるエピジェネティクス制御メカニズムを明らかにした初めての報告となる。研究グループは今後、同大学の臨床研究支援センターと協力し、同定した阻害薬の臨床応用を進める予定としている。なお、同研究成果は、米臨床研究学会誌「The Journal of Clinical Investigation」オンライン版に10月26日付で掲載されている。
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・自治医科大学 プレスリリース