■病院薬剤師に入力呼びかけ
三重大学病院薬剤部の村木優一副薬剤部長らの研究グループは、「抗菌薬使用動向調査システム」(JACS)を立ち上げた。厚生労働科学研究「全国を対象とした抗菌薬使用動向調査システムの構築および感染対策防止加算の評価」の成果として構築したもの。インターネットを通じて、国内の病院薬剤師に自施設の抗菌薬使用量などを登録してもらい、収集したデータをフィードバックして、抗菌薬の適正使用に役立ててほしい考え。無料で簡単に利用できるツールとして、全国の病院薬剤師に参加を呼びかけている。
同システムの利用者は、エクセルのワークシートを使って各抗菌薬の使用量や入院患者延べ日数、新規入院患者数を月ごとに入力し、システムに登録する。データ入力後は、抗菌薬使用量や使用日数が自動的に算出されたCSVファイルをダウンロードできるほか、自施設の抗菌薬使用量、使用日数などの年次推移をシステム内で目視できる。データ解析後には、他施設と自施設の比較データも閲覧可能になる予定だ。
一般的に、抗菌薬の使用量が多いほど薬剤耐性菌が出現しやすい。薬剤耐性菌を抑制するには、自施設の抗菌薬使用量の現状や推移を把握した上で、他施設との比較も踏まえ、自施設の抗菌薬の使用量が多いのであれば、それを改善する必要がある。抗菌薬の使用に偏りがあれば、その是正も求められる。
抗菌薬使用量や使用日数を複数の病院で共有化し、地域の薬剤耐性菌対策に役立てる取り組みが各地で進んでいるが、これまで全国的なシステムの構築は不十分だった。その点、JACSは、インターネット環境さえ整っていれば、全国のどの病院からもデータを収集できることが特徴だ。
JACSにデータが蓄積されれば、他施設と自施設の比較を高い精度で簡単に行うことができる。日本と世界の比較や、経年的な変化の解析も行える。
また、JACSの活用によって、抗菌薬使用量や使用日数の複雑な計算は自動化されるため、計算間違いを防止でき、自施設のデータ算出も容易になる。
研究代表者の村木氏は登録者に、2014年における自施設の施設情報や抗菌薬使用量などを、来月30日までに入力するよう呼びかけている。さらに来年1月末までに10年から14年における施設情報や抗菌薬使用量などを入力してもらいたい考え。これらのデータを解析し、他施設と自施設の比較データとして提供する計画だ。