高齢者における罹患率が10%近いと言われる閉塞性動脈硬化症
理化学研究所は10月22日、閉塞性動脈硬化症(PAD: Peripheral Artery Disease)の発症に関わる新たな3つの遺伝子領域を発見したと発表した。この研究は、同研究所統合生命医科学研究センター循環器疾患研究グループの田中敏博グループディレクター、尾崎浩一上級研究員らの共同研究グループによるもの。この成果は、オンライン科学雑誌「PLOS ONE」に、10月21日付で掲載されている。
画像はリリースより
PADは、下肢の血管が慢性的に閉塞する疾患で、高齢者における罹患率が10%近いと言われている。重症の場合には、下肢が壊死することもある。発症のリスク要因としては他の動脈硬化性疾患と同様に、高血圧、糖尿病、脂質異常症、喫煙などが挙げられるが、遺伝的要因が関与することが疫学的に証明されている。しかしながら、直接関連する遺伝子は分かっていなかったという。
オーダーメイド医療や薬学治療の実現に期待
今回、研究グループは一塩基多型(SNP)を用いたPADにおけるゲノムワイド関連解析(GWAS)を通して、PADの発症に関わる遺伝子の同定を試みたという。まず、日本人PAD患者785人、非患者3,383人を対象にヒトゲノム全体をカバーする約43万個のSNPを用いたGWASを行った。次に、このGWASの結果から上位500個のSNPについてサンプル数を増やし、患者3,164人、非患者20,134人で検証した結果、確かな統計学的有意性を示す3つのSNP(IPO5/RAP2A、EDNRA、HDAC9遺伝子領域)を同定したという。
そのなかでも最も強い関連を示した第13番染色体上のIPO5/RAP2A遺伝子領域については、詳細な遺伝的地図を作製することにより、原因となりうるSNP群を割り出し、その中の1つのSNPがリスク型の時、IPO5遺伝子の発現が減少することも発見した。
この研究成果は、PADの発症に関わる遺伝子領域を世界で初めて同定したもの。今後、詳細な解析を行うことによりPADの早期診断をはじめ、オーダーメイド治療法の確立や、新規治療薬の開発などにつながると考えられる。
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・理化学研究所 プレスリリース