嗅覚受容体1A1、2J3、2W1、5K1、5P3、10A6を特定
大阪市立大学は10月20日、同大医学研究科の渡辺恭良特任教授、山野恵美特任助教らのグループが、花王株式会社感性科学研究所との共同研究において嗅覚受容体に着目した研究を行い、香りによる抗疲労作用機構の一端を明らかにしたと発表した。
画像はリリースより
自然の香りの中には、覚醒、鎮静作用等の生理的な作用をもたらすものが存在する。花王の感性科学研究所は、香りが生理的な作用を示す機構の1つとして、香りを認識する嗅覚受容体が大きく関わっているのではないかと考え、嗅覚受容体に着目した研究を行っており、抗疲労に関する研究を行っている大阪市大医学研究科システム神経科学と共同研究を実施したという。
今回の一連の研究では、まず約400種存在するヒトの嗅覚受容体の中から、抗疲労作用を示すことが知られている、cis-3-hexenolおよびtrans-2-hexenalの混合物(Hex-Hex Mix, グリーン香)と、グレープフルーツ精油の2種の香りに共通して応答する嗅覚受容体6種(1A1、2J3、2W1、5K1、5P3、10A6)を特定。これら6種の嗅覚受容体が、抗疲労作用に関係する可能性を示したという。
嗅覚受容体を活性化する香りの抗疲労作用をパフォーマンス試験で確認
また、抗疲労作用を示す香りに共通に応答する6種の嗅覚受容体に対し、それぞれの受容体を活性化する新しい香りの探索を行ったところ、約170種類の香料の中から、「メチルイソオイゲノール」「l-カルボン」「メチルβナフチルケトン」「フェニルエチルアセテート」の4種の香料の混合物である、ハチミツがかった甘い花の香り(MCMP)が、6種の受容体を活性化することも発見した。
さらに、抗疲労作用を示す香りに共通して応答する嗅覚受容体を活性化するMCMPによる抗疲労作用を、パフォーマンス試験で調査。17名の健常男性を対象に、MCMPの香りあり、なしの条件下でパソコン作業による疲労負荷を40分間行い、その前後で作業効率の指標である課題の正答率を評価。その結果、香りなしの場合に疲労負荷後に正答率が有意に低下するのに対し、香りありの場合には正答率の低下が認められず、疲労が抑制されたことが示されたという。
香りの生理作用に関する研究は、グレープフルーツ精油による抗肥満作用やラベンダー精油によるリラックス作用などが知られているが、生理作用に関わる可能性がある嗅覚受容体を特定し、実ヒトの抗疲労における生理作用との関連を確認した研究は今回が初めて。研究グループは今後、「快適な生活実現」に貢献するモノづくりに応用されることが期待されると述べている。
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