CCFS患児は注意配分時に広範囲の前頭葉が過剰活性
大阪市立大学は10月15日、小児慢性疲労症候群(CCFS:Childhood Chronic Fatigue Syndrome)の患児の脳では、2つ以上のことを同時に遂行する「注意配分」を行う際に前頭葉が過剰に活性化し、非効率な脳活動状態となっていることを、機能的磁気共鳴画像法(fMRI)を使って明らかにしたと発表した。
画像はリリースより
この研究は、同大医学研究科システム神経科学の渡辺恭良特任教授、疲労医学講座の水野敬特任講師および理化学研究所、熊本大学、兵庫教育大学、生理学研究所との共同研究グループによるもの。研究成果は、オランダのオンライン科学雑誌「Neuroimage: Clinical」に9月10日付で掲載された。
CCFSは、3か月以上持続する疲労・倦怠感および睡眠・覚醒リズム障害を伴う疾患。有病率は0.2~0.3%といわれ、不登校の児童・生徒の多くが発症している。CCFSによる記憶や注意力の低下は学校生活への適応を妨げている可能性があることから、子どもの疲労と脳機能の関係の解明が期待されていた。
共同研究グループはこれまで、小・中学生を対象に、平仮名で書かれた物語を読ませ、母音の拾い上げと物語の内容理解の同時処理を要求する仮名拾いテストと呼ばれる注意配分課題(二重課題)を実施。同時に行った疲労度調査との関連について検討を行ってきた。その結果、CCFS患児の成績は健常児より低く、また健常児でも疲労を強く感じている状態では成績が低くなることを明らかにしている。しかし、注意配分機能が低下している脳内で何がおきているのかは分かっていなかった。
CCFSの病態解明や治療法開発への期待も
今回、CCFS患児15名と健常児13名を対象に、二重課題および一重課題(母音拾い上げ、または内容理解のどちらか一方)遂行中の脳活動状態をfMRIで測定。その結果、CCFS患児と健常児、いずれも、二重課題遂行中は一重課題遂行中に比べて前頭葉の一部である脳の左側の下前頭回背側部と頭頂葉の一部である左側の上頭頂小葉が活性化していたことが判明。これら2つの脳部位が、二重課題の遂行に必要な脳領域であることが示された。
次に疲労と脳の活性化の関係を調べたところ、疲労している健常児は、二重課題遂行中に左下前頭回背側部をより強く活性化させていることが分かった。一方、CCFS患児と健常児を比較すると、CCFS患児では一重課題と二重課題いずれの時も右中前頭回が特異的に活性化し、活性度は物語の内容理解度と正の相関関係にあること、二重課題においては右中前頭回に加え、前帯状回背側部と左中前頭回も特異的に活性化することも明らかになったという。このことからCCFS患児は、過剰に神経を活動させて脳の情報処理を行っているために、疲労が増強していることが懸念される。
研究グループは今回の成果の成果について、前頭葉の過活動の抑制がCCFSの症状の緩和につながる可能性など、CCFSの病態の解明や治療法の開発への貢献が期待できるとしている。
▼関連リンク
・大阪市立大学 プレスリリース