この日の部会では、薬価算定組織が示した見直し案を議論した。厚労省は、先駆導入加算のあり方について、薬事制度と一貫性を持たせる「先駆け審査指定制度加算」の名称に変更し、加算率を現行の10%から「10~20%」と最大20%に引き上げ、日本における早期の開発姿勢やそれに伴う臨床試験の充実度として、ファースト・イン・ヒューマン(FIH)試験やPOC試験の実施を上乗せ評価する方向性を示した。
これに対し、支払側の白川修二委員(健康保険組合連合会副会長)は「まだ加算の実績がないにもかかわらず、最大20%に引き上げる提案はいかがなものか」と疑問を呈し、「もう少し実績を見て、次のステップの議論として進めていくべき」との考えを述べた。
診療側の中川俊男委員(日本医師会副会長)も、最大20%に加算率を引き上げる案に反対姿勢を示し、「加算率を引き上げたからといって、新薬が出てくるわけではないのではないか。製薬企業がグローバルメガファーマ化している中で、日本で先駆けて承認された品目に加算を付けるのは筋が違う」と強調した。
一方、業界代表の加茂谷佳明専門委員(塩野義製薬常務執行役員)は、厚労省案について、薬事審査の段階から一貫性があり、製薬企業の予見性を高めるとして高く評価。「世界に先駆けて上市したことへのインセンティブは、ぜひお願いしたい」と要請した。
また厚労省は、新規性の乏しい医薬品として、後発品対策と考えられる新薬について、▽補正加算に該当しない▽収載後5年以降で後発品の発売時期に合わせて上市したと判断できる▽製造販売業者、効能・効果、薬理作用、投与形態、臨床上の位置づけが同じ既収載品がある――の全てに該当する場合は、ラセミ体を光学分割した新薬の特例算定と同様に0.8がけとする案を提示。目立った反対はなかった。
ただ、加茂谷専門委員は「新薬創出等加算の後押しを受け、より新規性の高い医薬品を開発する企業行動に変わってきている」と指摘。併せて新規性の高い医薬品の評価も求めた。
市場拡大再算定の対象拡大をめぐっては、年間販売額が巨額な品目について、「巨額」の水準をどう考えるかが焦点となった。白川委員は「例えば、市場規模、基準倍率を段階化、細分化してはどうか」と提案。土屋裕専門委員(エーザイ代表執行役)は「売上が大きいことは、患者に広く使われ、医療ニーズを満たしていることと考えている」と述べ、改めて業界として市場拡大再算定に反対する姿勢を示した。