種を超え広くみられる摂取カロリー制限による寿命の延長
東京大学は10月14日、Sアデノシルメチオニン(SAM)の代謝を促進させることで寿命が延びることを、ショウジョウバエを用いた研究で明らかにしたと発表した。また、SAM代謝の促進が、食餌制限による寿命伸展の一因であることも発見したという。
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この研究は、同大大学院薬学系研究科の小幡史明特任助教と三浦正幸教授ら研究グループによるもの。研究成果は、「Nature Communications」オンライン版に9月18日付で掲載されている。
摂取カロリーを制限すると寿命が延長する現象は、酵母、線虫、ショウジョウバエ、マウスからヒトまで種を超えて広くみられる。近年の研究から、実際には総カロリーではなく、摂取する食餌の質が重要であることがわかってきた。なかでも、必須アミノ酸の一種であるメチオニンだけを制限することでも寿命が延長することが示唆されている。しかし、その詳細なメカニズムは明らかになっていなかった。
SAM量の調節が寿命延長の鍵となる要因
研究グループは、ショウジョウバエの脂肪組織にSAMの量を一定にしようとする仕組みがあることを発見し、この機能を担う酵素とその遺伝子を特定。SAMの量を詳しく分析したところと、老化したショウジョウバエの体内ではSAM量が増加していたという。
そこでSAM量を調節する酵素の働きを遺伝学的に強めたところと、代謝が促進され加齢に伴うSAM量の増加が抑えられ、個体の寿命が延長することが判明。さらに、SAM量を調節する酵素の機能を欠損させたショウジョウバエでは、食餌制限による寿命延長効果が見られないことから、SAM量の調節が寿命延長の鍵となる要因であることを見出したとしている。
SAMの代謝経路はヒトにも同じように存在するため、今回の発見は人間の寿命や健康に関する研究に役立つ知見になるとして、今後の研究に期待が寄せられる。
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