2家系の患者でhnRNPA1遺伝子の変異を確認
東北大学は10月6日、同大学院医学系研究科・神経内科学分野の青木正志教授らの研究グループが、同・遺伝医療学分野の青木洋子教授、同・創生応用医学研究センター・細胞増殖制御分野の中山啓子教授らと共同で、遺伝性ミオパチーのひとつである封入体ミオパチーの原因遺伝子として「hnRNPA1」を同定したと発表した。
画像はリリースより
ミオパチーは病状の進行とともに筋力の低下や筋肉の萎縮が生じる筋疾患の総称で、筋ジストロフィーなどが知られている。なかでも、生検で観察される骨格筋の細胞内に出現する縁取り空胞を特徴とし、遺伝子の異常によって生じるものを遺伝性封入体ミオパチーと呼ぶ。現在まで10種類以上の原因遺伝子が発見されてきたが、まだ原因が明らかとなっていない遺伝性封入体ミオパチーがあった。
今回の研究では、遺伝性封入体ミオパチーを生じる2家系の患者とその家族から得られたDNAを対象に、次世代シークエンサーを用いて全遺伝子の翻訳領域配列決定をおこない、この疾患の原因遺伝子を探索。その結果、この2家系の患者において、hnRNPA1遺伝子に変異を見出したという。
遺伝性神経筋疾患の病態解明と治療法の開発に期待
hnRNPA1遺伝子は、多系統タンパク質症と呼ばれるまれな遺伝性疾患の原因遺伝子として報告されている。多系統タンパク質症は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、前頭側頭型認知症、封入体ミオパチー、あるいは骨パジェット病といった異なる疾患を組み合わせた形で発症する遺伝性疾患。同じ家系内であっても患者ごとに発症する疾患の組み合わせが異なる場合がある点が特徴され、近年までに5つの原因遺伝子が明らかとなっている。そのひとつであるhnRNPA1 遺伝子に変異が生じると、多系統タンパク質症3型の原因となることが報告されていた。
今後、他の遺伝性封入体ミオパチーや類似の筋疾患において、RNA結合タンパク質関連遺伝子の網羅的解析を加えることにより、日本での有病率、自然経過や予後を含めた疾患の全体像の解明につながる可能性がある。また、国外では多系統タンパク質症のモデル動物を用いた治療法開発研究も始まっており、封入体ミオパチーのモデル動物開発、iPS細胞を用いた病態解明など、治療ターゲットの発見につながる研究の発展が期待されている。
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