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大村氏にノーベル医学生理学賞-日本薬学会会員で初の快挙

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2015年10月14日 AM10:30


■微生物創薬に注目‐薬学研究へ励み

2015年のノーベル医学生理学賞の受賞者に、大村智北里大学特別栄誉教授ら3人が決まった。寄生虫感染症への画期的治療法の発見に対して贈られたもので、大村氏が発見した抗寄生虫薬エバーメクチンの誘導体は、顧みられない熱帯病のオンコセルカ症(河川盲目症)の特効薬として使用され、北里研究所と米メルクの無償提供により、アフリカ等の貧しい数億人の患者が恩恵を受けた。大村氏は、日本薬学会名誉会員でもあり、薬学会会員のノーベル医学生理学賞受賞は初の快挙。バイオ医薬品が全盛期の時代に、日本が得意とする伝統的な微生物創薬が高く評価されたことは、薬学研究の分野に大きな励みとなりそうだ。

若き日の大村氏

大村氏は、有機化学者として薬学研究に深く関わってきた。1968年に東京大学で薬学博士を取得。75年から84年まで北里大学薬学部教授、90年から2008年までは北里研究所所長を歴任した。86年には、「マクロライドをはじめとする各種抗生物質に関する総合的研究」で日本薬学会学術賞を受賞しており、日本薬学会名誉会員でもある。

今回の受賞について、日本薬学会の太田茂会頭は、「大村先生は、微生物代謝産物に関して、長年にわたって研究なさり、医療、医薬品創製の分野に大きく貢献してこられました。今回のノーベル賞受賞は、日本薬学会会員として初めてのことであり、大変喜ばしく、また誇らしいことだと思っております」と本紙にコメントを寄せた。

大村氏は、フィラリアなど線虫類用の抗生物質を作り出す放線菌を静岡県川奈の土壌から発見し、その放線菌から産生されるエバーメクチンが様々な寄生虫疾患に効果があることを突き止めた。

この物質を改良した誘導体がメルクとの共同開発により、駆虫薬「」として実用化され、途上国の最貧層の人々に蔓延していたオンコセルカ症やリンパ系フィラリア症の発生率を著しく低下させる劇的な効果をもたらした。これまで独創的な方法により、微生物由来の化合物を400種類ほど発見し、そのうち17種類がヒトや動物用医薬品、農薬として世界中で広く使われている。

05年には、エバーメクチン発見から25周年の記念像が、ゆかりの地である北里研究所キャンパス内に設置された。オンコセルカ症の大人を杖で引いて歩く子供の記念像は、オンコセルカ症征圧のシンボルとして、米メルク、世界銀行、ブルキナファソ市内の4カ所に設置されており、北里研究所が5カ所目。大村氏の強い思いから、現地の芸術家に製作を依頼したもので、ブルキナファソから日本に運ばれた記念像は、アフリカで製作された初めてのものとなった。

天然物創薬の衰退が叫ばれて久しく、製薬企業が顧みられない熱帯病など途上国等の公衆衛生への貢献に取り組み始めた中、その両方を体現した大村氏のノーベル賞受賞は、天然物創薬の見直しやグローバルヘルスへの貢献を改めて考えるきっかけとなりそうだ。

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