ヒト型抗ヒト細胞傷害性Tリンパ球抗原-4モノクローナル抗体
アストラゼネカ株式会社は10月8日、日本の悪性中皮腫患者に対する「Tremelimumab」の国内第1相臨床試験を開始したと発表した。
悪性中皮腫は、そのほとんどが胸部および腹部の内膜(胸膜、腹膜)に発現する希少かつ悪性度の高いがん。特に、病勢が進行している患者への有効な治療法は非常に限られており、5年生存率は、適切な診断や治療を受けた場合でも5%未満とされている。国内においては、年間およそ1,400名の人が中皮腫で死亡しているという。
Tremelimumabは、アストラゼネカが開発中のヒト型抗ヒト細胞傷害性Tリンパ球抗原-4(CTLA-4)モノクローナル抗体。活性化T細胞における抑制的調節因子であるCTLA-4と、そのリガンドである抗原提示細胞上のB7(CD80/CD86)分子との結合を阻害することにより、ヒトの免疫システムをつかさどるT細胞を活性化するよう設計されている。
悪性中皮腫治療におけるアンメットニーズを鑑み、治験を開始
今回開始したのは、切除不能な日本人胸膜または腹膜悪性中皮腫患者を対象とした、二次治療または三次治療におけるTremelimumabの安全性、忍容性、薬物動態および予備的抗腫瘍効果を検討する非盲検多施設共同第1相試験。
対象患者は、「組織学的または細胞学的に、胸膜または腹膜悪性中皮腫であることが確認されており、外科手術による根治が不可能な20歳以上の日本人患者」、「ECOG Performance Statusが0~1の患者で、一次治療としてのペメトレキセド(または他の葉酸代謝拮抗薬)と、白金製剤の併用治療を含む1レジメンまたは2レジメンの全身化学療法の後、病勢が進行した患者」、「CTまたはMRIにより正確に評価され、経時的に評価することに適した1つ以上の測定可能病変を有する患者」、「別途定義する適切な骨髄機能、肝機能および腎機能を有する患者」となっている。
Tremelimumabは、海外では、悪性中皮腫患者に対する後期第2相試験(phase 2b)を実施中で、2015年4月には米国食品医薬品局(FDA)から悪性中皮腫治療薬として希少疾病用医薬品に指定されている。日本では、固形がん一般を対象とした国内臨床試験が2014年5月に開始されていたが、悪性中皮腫治療におけるアンメットニーズを鑑み、今回の国内第1相臨床試験を開始するに至ったという。
今回の試験では、国内約13医療機関において、約40症例登録を目標に、Tremelimumabを投与した際の安全性と忍容性の評価を行うとしている。
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・アストラゼネカ株式会社 プレスリリース