シェーグレン症候群の口腔症状が低出力パルスで改善
徳島大学は10月8日、同大学医歯薬学研究部口腔顎顔面矯正学分野の田中英二教授らの研究グループが、伊藤超短波株式会社との共同研究で、シェーグレン症候群で特徴的なドライマウスに対して、低出力パルス超音波を炎症状態の唾液腺に照射することで、唾液分泌量が劇的に増加し、ドライマウスの改善にもつながることを明らかにしたと発表した。
シェーグレン症候群は、中年女性に好発する原因不明の難治性自己免疫疾患の一種で、国内での患者数は10~50万人と推定されている。ドライマウスはその口腔症状のひとつであり、自らの唾液腺破壊から唾液腺の炎症とそれに伴う唾液分泌量低下によって生じ、治療法は人工唾液など口腔内を湿潤化することを目的とした対症療法が中心だ。
同研究グループは、2008年から7年間「顎顔面領域の骨治癒に対する低出力パルス超音波の有効性に関する研究」を実施。その間、低出力パルス超音波の軟組織損傷に対する抗炎症作用に着目し、関節リウマチなどの自己免疫性疾患の消炎療法としての応用を模索していた。
従来の薬物療法とも併用可能
今回、研究グループは、炎症状態下の唾液腺細胞およびシェーグレン症候群様モデルマウス唾液腺への低出力パルス超音波を照射。その結果、低出力パルス超音波照射はNFκB経路を抑制的に制御している脱ユビキチン化酵素A20を活性化させることで炎症性サイトカインTNF-αの発現を減弱させ抗炎症作用を示し、水分泌に関与するアクアポリン5の発現が増強することで唾液分泌が増加しうることを明らかにしたという。
低出力パルス超音波は、非侵襲的で副作用などの弊害もなくドライマウスを改善しうる有用な治療法であり、従来の薬物療法とも併用が可能だという。今後、同研究グループは、唾液腺分泌機能に対する低出力パルス超音波照射の奏効率や奏功期間を検討していく予定としている。
なお、今回の研究成果は英科学雑誌「Arthritis Research & Therapy」10月号オンライン版に掲載されている。
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