オメガ3脂肪酸由来の脂質代謝物「レゾルビンE1」に着目
京都大学は10月6日、同大学医学研究科の椛島健治教授および本田哲也同特定准教授らの研究グループが、魚油に多く含まれるオメガ3脂肪酸由来の脂質が、皮膚のアレルギー反応を改善させることを発見したと発表した。同研究成果は、米科学誌「The Journal of Experimental Medicine」誌に掲載されている。
画像はリリースより
魚油に多く含まれるエイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)といったオメガ3脂肪酸は、古くからさまざまな病態において炎症抑制作用があることが知られていた。オメガ3脂肪酸はヒトでは体内で生成できないが、食べ物から摂取され体内で代謝され、種々の抗炎症性物質が生成されることが知られている。しかし、その抗炎症作用のメカニズムはいまだ不明な点が多く残されている。また、皮膚アレルギー反応における作用についてはほとんど解析が進んでいなかった。
研究グループは、オメガ3脂肪酸由来の脂質代謝物の一種である「レゾルビンE1」に着目。皮膚アレルギー反応で重要な働きを担う樹状細胞の機能を制御して、皮膚アレルギー反応に抑制効果を有することを世界で初めて証明したという。
オメガ3脂肪酸をターゲットとした新たな治療法の開発に期待
まず、レゾルビンE1による皮膚アレルギー反応の抑制効果を評価するため、皮膚アレルギー反応の一種である接触皮膚炎(かぶれ)モデルを用いて検討。マウスの皮膚にアレルギー物質を塗布し皮膚炎を誘導したところ、レゾルビンE1の投与によって皮膚炎が抑制されることが分かったという。
次に、レゾルビンE1の生体内での作用機序を検討したところ、レゾルビンE1の投与により皮膚の樹状細胞の動きが低下することが判明。さらに、樹状細胞の動きが低下する結果として、かぶれ反応を直接に引き起こすT細胞の活性化が障害され、かぶれ反応が抑制されることがわかったという。
オメガ3脂肪酸由来の脂質代謝物は多数存在し、まだまだ未知の抗炎症物質と作用があると考えられる。また、食由来の物質であることから、安全性は極めて高い。今後は、レゾルビンE1以外の脂質代謝物にもターゲットを広げ、その抗炎症作用とメカニズムを検証し、皮膚アレルギー反応の改善につながる成果を目指したいと研究グループは述べている。
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・京都大学 研究成果