安泰成氏(横須賀共済病院薬剤科)は、急性期病院として在宅へ患者を送り出す立場から、薬学的フィジカルアセスメントが薬薬連携のカギになるとし、在院日数が比較的短い急性期病院では、在宅での薬物療法に対する継続的な評価や追加指導が難しい状態にあると説明。入院中の薬歴や退院時の疼痛評価などを病院薬剤師が情報提供する一方、在宅に関わる薬剤師がフィジカルアセスメントを実践し、患者状態をフィードバックする薬薬連携の体制が重要とした。
安氏は「バイタルサインは薬剤の効果・副作用を判定するための材料となり、薬物療法をさらに安全性の高いものにする。特に病院薬剤師にとっては、非常に心強いもの」と訴えた。
薬局薬剤師の立場から、小黒佳代子氏(ファーマ・プラス)は、医者との往診同行前に行う疼痛評価の取り組みを紹介した。小黒氏は、在宅患者の状態は刻一刻と変化するため、「現在の病態を正確に把握することが大切」と指摘。医師の往診前に血圧などのバイタルサインだけでなく、食欲や睡眠など全身状態を把握し、患者の要望に耳を傾けることにより、疼痛コントロールに向けた新たな処方を医師に提案していくべきと訴えた。
小黒氏は「バイタルサインは医療者の共通言語。患者も医療従事者間が同じ方針を共有していることに安心感を抱くことができる」と述べ、「疼痛を評価する時にはオピオイドの種類や量に気を取られがちだが、患者の気持ちや環境などにも耳を傾けつつ、疼痛コントロールを実践すべき」と述べた。
一方、退院調整に当たる看護師の立場から、清田みゆき氏(横浜市立大学病院福祉継続看護相談室)は、退院前カンファレンスにおける薬局薬剤師の参加が重要とした。在宅への移行時に、家族を対象に薬剤混注などの指導を行っているものの、清潔操作が十分でないなどのケースもあり、カテーテル関連の感染症リスクが高い状態にあることを指摘。そのため、「薬剤師のアドバイスを踏まえ、医療処置をできるだけ簡素化する必要がある」と語った。
また、癌の末期患者は、退院後も病状の進行や心理的な変化に合わせ、在宅で再度、薬剤調整を行う必要があることから、入院中の患者情報や退院後のサービス状況を把握してもらうため、退院前カンファレンスに薬局薬剤師が参加することが欠かせないとした。
その上で、清田氏は「医師などと共同して行う居宅療養管理指導のできる薬局がどこにあるか分からず、利用できない状態にある」と指摘。今後、薬局側でも在宅訪問業務に応需可能な体制を整え、医療・福祉関係者にその情報を周知していくことが重要だとした。